河合隼雄さんの『大人の友情』の13話目から、12の大きなカテゴリーで構成された4番目のテーマ「友人の出世を喜べるか」に移行します。一つ前は「男女間に友情は成立するか」でした。「性愛と友情の関係」を、分析し終えた河合さんの次なるテーマは、「嫉妬心と友情」のようです。さて、いかなる世界が展開されるのでしょうか。最初のタイトルは「何となくイライラする」です。
Aは、中年、働きざかりの官僚である。仕事はやり甲斐があるし、部下もよく働く。今日も、出勤してテキパキと仕事をこなしているのだが、朝から何となくイライラしている。部下の持ってきた書類の、ワープロの変換ミスによる漢字の間違いを、いつもだったら、「あっ、変換ミスか」で、やりすごしたり、時には冗談のひとつも言うのに、今日は、「何だこれは！」と強く怒ってしまった。「いい加減な態度で、仕事をするな！」などと追い打ちをかけてしまった。
冒頭で、このエッセイに登場するAさんは、普段と違って、今日はなぜかイライラしているようです。「イライラの原因がわからないのだ」と、河合さんは言葉を添えます。Aさんは考えます。そして一つの気づきを得ます。
前日の帰宅前に、大学時代の友人で、他省の官僚になっているＢから、「今度、課長になることになったよ」と電話があり、その際、「それは凄いな、おめでとう」と、電話を切った。そこからイライラが始まっている。
ただ、この時点では、Aさんは自己分析に至っていません。帰宅してBが課長になったことを妻に告げると、「あの方はよくお出来になるからね」という言葉が返ってきます。そこからAさんの自問自答が始まります。
何かもう一言欲しい気分になって、「Bと祝杯でもあげるか」と言ってみる。「祝杯？」と、妻の方は、けげんな顔をしただけで、後は続かない。ここからイライラはますます増幅されてくる。
「あの省は、Bさんみたいな人でも、早く課長になれるのね」ぐらい言えばいいのに、と思う。「祝杯、男の人というものはいいものね」という答えもある。Aは心のなかで、夫婦の会話をやってみるが、実際は何となく気まずい沈黙だけだ。
夫婦の「あるある」が伝わってきますね。ここで「遠慮会釈もない」ということばが浮かんできました。「控え目にすることも、手加減することもない」表現が飛びだしてくることです。コーチングのフィードバックとは、「忖度を排して、コーチが感じたことをクライアントにそのまま告げること」です。ただし、そこには「ジャッジメント」のニュアンスはありません。
最も近しい、「甘え、甘えられる関係」を繰り返してきた夫婦にとっては、プロコーチが使わない「辛辣な言葉」が飛び交うのも「常態」と言えるかもしれませんね（笑）
「夫婦関係にコーチングは成り立つか？」は、遠大なテーマですが、「忖度を超えた関係性」だからこそ、「真のコーチングが実現する可能性を秘めている」、と解釈できそうです。
妻の無反応も踏まえて、Aさんはさらに自問自答します。
そのうちにBと共に飲んだときなど、「お互いに出世にこだわらない方だからな」などと言いあっていたことも思い出した。「出世にこだわらなくとも、男は友人の出世にイライラするのだな」などと思うと、むしろ気分は晴れてきた。「ともかく、Bと祝杯をあげよう」という気分がアッサリと起こってきた。
これが友情の難しいところである。友人の悲しみに同調するのは、それほど難しくはないが、喜びに対しては、思いがけない嫉妬が動き始めることが多いのである。この方が普通だと言ってもいいだろう。
河合さんは、「下手に“理想の友情”に囚われることで、イライラはつのる」と、言葉にし、「自然体として友情を深めていく対話」を最後に提供してくれました。
Aのように自らの心の動きに気づく方が実害がない。そして、もしよいチャンスがあれば、「友情とか、出世にこだわらんとか言ってても、お前が課長と聞いたときは、結構イライラしてな」とBと話しあってみるのもいいだろう。その会話によって、二人の友情が深められることも感じるだろう。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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