河合隼雄さんの言う「荷物は礎にせなアカンわけですよ」…その意味とは?

(小川)
人間が困難な現実を、自分の心に合うように組み立て直して受け入れるというのは、私にもよくわかるんですけれど、ときどき、例えば地下鉄サリン事件に遭って助かった方だとか、尼崎の脱線事故で助かった方、あるいはアウシュビッツから帰って来たというような人の中に、罪悪感を持つ人がいますよね。
(河合)
います、います。
(小川)
自分は助かったけどみんな死んだ。何で自分は助かったんだろうと思い悩む。オウムやJR西日本、ナチスドイツなど、その原因を作った本当に非難されるべき対象が、ちゃんとあるにもかかわらず、生き残った自分自身を責めてしまう。人間は時として現実を、むしろ自分の心をより痛めつける方向に、変えて受け止めてしまうということをしますね。それが私には、とっても不思議なんです。
(河合)
自分は何も悪いことをしていないけれど、生まれつき罪があるんだ、というのは、キリスト教の根本ですね。
(小川)
生きていることが罪。
(河合)
そう。「原罪」ということです。

生きるとは、自分の物語をつくること』の10番目の見出しは「原罪と物語の誕生」です。ロジックで組み立てていく「理論」の多くは、欧米発であり、日本はそれらを輸入し、アレンジしつつ、取り込んできました。心理学もその流れです。
河合さんは米国、そしてスイスに留学し、欧米を体感します。欧米のさまざまな「物語」を渉猟し、欧米文化と日本の文化の違いを、宗教観の違いとして同定させていくのです。河合さんには宗教に関する著作が多く存在しますが、それらを読み込むと、知的理解を超える河合さんの魂が感応した著作群であることが実感されます。

(小川)
母親は子供を亡くすと、それが病気や事故で、自分に責任がない場合でも、必ず「自分が殺した」とか「自分がもっとこうしていれば」って、非常な後悔で残りの人生を生きがちですよね。
(河合)
そのとおりです。だけどそのことを、重荷として苦しんでばっかりおったら意味ないわけでしょ。その荷物を礎(いしずえ)にせなアカンわけですよ。
(小川)
荷物を頭の上に載っけてるのではなくて、生きていくために踏んばる足を支えるものに変えるということですね。
(河合)
そこまではやっぱり、付き合わないとならんですね。そういう時、原罪というものを柱として持っている宗教があると知っているということは、ものすごく強いことです。そういう意味で僕らは、いろいろ勉強する必要がある。一方で、よほどのことでも、どこかの物語の中に必ずあると言っていいんじゃないかと思っています。

河合さんの肩書(専門)は臨床心理学者ですが、「CBLコーチング情報局」は河合さんを「リベラルアーツの泰斗」として捉えます。糟糠の妻である「臨床心理学」を一生愛し続けながら、その研究テーマは「森羅万象」に広がっています。その河合さんが「いろいろ勉強する必要がある」と言うのです。私たちコーチも、その言葉を真摯に受けとめます。

この「原罪と物語の誕生」の最後のところを引用して、今回の解説を終えることにします。次の見出しである「多神教の日本で生まれた『源氏物語』」につながっていくお二人の対話を味わっていただければ、と思います。

(小川)
人類が誕生した途端に、物語も誕生したということなんでしょうか。
(河合)
それが言語的物語となるのは、一万年ぐらい前でしょうか。非言語的世界がとても長かった。そして言語を獲得するやいなや、みんな神話を作っている。
(小川)
獲得した言葉によって、箱庭を始めているわけですね。
(河合)
ええ、実際、神話を持たない部族ってないです。
(小川)
それだけ自然というものが脅威だったし、神秘だったからということですね。
(河合)
その中で生きていこうと思ったら、物語を作らなくてはなりません。
(小川)
たとえば、古代ギリシャ人が、太陽は、四頭立ての馬車に乗ってやってくる英雄だ、というふうな素晴らしい物語を作るっていうのもそうですね。太陽が何億キロ先にあって、直径何メートルという現実よりも、四頭立ての馬車に乗った英雄として見た方が、受け入れやすい。そして、その言語化された物語が、日本では世界の文学史の中でもいち早く誕生したというのは、誇らしいです。
(河合)
『源氏物語』ですか。
(小川)
ええ。


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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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