『大人の友情』の9番目のテーマ「友情と同性愛」の3話目は、「惹きあう力」です。
前話で河合さんは、トーマス・マンの『トニオ・クレーゲル』を取り上げています。14歳のトニオが、愛するハンス・ハンゼンに抱く、強い感情描写のシーンを引用しているのですが、リックリン博士の視点を用いて、ホモセクシュアルではなくホモエロスという見方もある、と論を展開しています。
この「惹きあう力」も、この『トニオ・クレーゲル』からスタートしました。
どうしてこのような強い牽引力がはたらくのだろう。『トニオ・クレーゲル』には、トニオがハンス・ハンゼンを愛したのは、「第一にハンス・ハンゼンが美しいからであった。しかし第二にそれは、相手があらゆる点で自分とは逆の正反対の人間と思われたからであった。
確かに人間は美しいものに心を惹かれる。相手の「美しさ」が重要な条件となるのは、友情のときよりも恋愛の場合の方が大きいだろう。しかし、恋愛中に「美しく」見えた人が、心の冷えた後では、まったく美しいと感じられないという経験をした人は多いと思う。つまり「美しい」という判断は、それほど当てにならないのである。
河合さんは、こうやって「リアル」を語ってくれます。ルッキズムについては、単純なバイアスとも異なり、どこか本能につながっているようにも感じますが、「美」の基準とされるものも、時代によって変化しているので、河合さんの言うように、「それほど当てにならない」と受けとめるのが、健全だといえそうですね。
河合さんはここで、「類似性」と「相反性」に触れます。
友情という点で言うと、その友人が自分といろいろな点でよく似ていて、考えていることや感じていることもすぐ一致する、というときと、『トニオ・クレーゲル』の場合のように、むしろ、自分とはいろいろな点で反対で、そこに憧れを感じる、という場合がある。前者の場合は、関係は固く安定感がある。後者の場合は時に争いがあったり、絶交と言ったりもするが、そこに不思議な魅力が存在する、と言えるだろう。非常に割り切った言い方をすると、類似性の高さは関係の維持に役立ち、相反性の高さは、関係の発展のために役立つ、ということになるだろう。
河合さんは、「自分に無いものを多く持っている相手に対して、それを自分のものとしたい」という欲求を、心理的、身体的の二つの側面で捉えます。前者は「同一視」によって合体しようとし、後者は「性的な関係」による合体が、一番端的な表現となる、と語ります。
河合さんのさまざまな著作を読むと、それらに通底するテーマが感じられます。それは、欧米文化と日本文化(東洋)を対置させ、俯瞰して捉える、という視点です。当該エッセイにも、そのテーマ性が感じられるところです。
最後のパラグラフは、「友情と同性愛」の最終話となる4話につなげていく言葉が挟まれました。引用して3話の解説を終えることとします。
二人の男性、あるいは、二人の女性がまるで合体、融合したかのような状態になるが、何らかの性関係がない、ということは欧米人には考えるのが難しいことのようである。したがって、先生とKとは同性愛ではないか、と言ったり、合体を望むような関係になりそうだと、それを恐れて分離していったり、同性愛関係になってしまったりする。心は合体するが体は合体しない関係がわかりにくいのである。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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