前回は、コーチングとは大きく異なるカウンセリングのクライアント像を取り上げました。希死念慮、自殺念慮にあるクライアントです。『<心理療法コレクションⅡ>カウンセリングの実際』からの引用です。
「相手の言うことを無条件に聴けないということが生じたとき、私はむしろそういうことも尊重すべきだと思います」という言葉で終わっていますが、河合隼雄さんはその後で、自分は日本国籍ではないことを誰にも告げていなかったクライアントが、カウンセラーにそのことを告白したシーンについて、語りを進めます。
その場合、「あなたは日本人じゃなくて、ほかの国籍なんですね」というふうに無条件に積極的関心を示さなくて、そんな答えができなかったとします。そして、思わず知らず話をそらしてしまう。そして、「あなたの子どもさんは日本国籍でしたね」ということを言ってしまう。これは、クライアントは自分の国籍は違うと言っているのに、カウンセラーが、それを受けいれるのはつらくて仕方がない。が、せめて、その子供さんが日本の国籍だということは受けいれられるので、そちらを言ってしまう。だから、向こうの線とこちらの線がくい違ってしまう。(117ページ)
実はこのくだりを読んだとき、少し違和感を覚えました。日本の臨床心理学者である河合隼雄さんのキーワード解説は、2007年にお亡くなりになった後、アンソロジーとして2009年に発刊された6冊を中心に解説を進めています。<コレクションⅥ>は2006年発刊ですが、今回取り上げた<コレクションⅡ>は、河合さんの初期の著作である1970年のものです。
バブルが崩壊し「失われた30年」を経た今日、「世界が日本をどう捉えているのか?」と考えたとき、1970年頃は「外国人が日本国籍でないことを告白できないような空気に覆われていた」ことに気づかされます。当時と今を比較することがテーマではありませんので、触れませんが、世界における「そのときの国力の違い」によって、個人、そして社会に形成される意識が違ってくる(違っていた)こと気づかされます。
知的な学習を重ね、資格を有するカウンセラーにとっても「日本人だと思っている人がそうでないことを知ったとき、ショックを受ける」というのが当時の世相だった、ということです。
さて、今回のテーマであるロジャーズの「無条件の肯定的配慮」については、違和感なくその思いが伝わってくる内容ですから、河合さんの語りを続けることにします。
ここで、カウンセラーがこの人が日本の国籍でないことを初めて知って、びっくりしすぎてしまって無条件的な積極的関心を払えないのに、恰好だけあるかのごとくみせかけて、「そうでございますね」というようなことを言った場合は、はるかに悪い結果がでてきます。というのは、カウンセラーがそれを本当に消化できないのに、消化できたような恰好をして話が進むと収拾がつかなくなる。(中略)
私は、皆さんのカウンセリングテープなど聞かせてもらって、「あなたは、ここは受容していないんじゃないか」というような場所を「いや、ここは受容しなかったことに意味がある」と言いたくなるようなことが多い。ここで受容しないことによって、次のときまで待っているんだ、二人が本当にそれを受けいれられるときまで待っているんだという感じがするときがあります。(117ページ)
改めて河合さんの深みを感じるコメントですね。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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