最相葉月さんの『セラピスト』の中で、「河合隼雄は臨床心理士に向けた講演で次のように語っている」と、河合さんの次の言葉を引用しています。
私が京都大学に居た時、こんなことがありました。大学院生ですから若い独身女性、ところが相談に来るのは60歳を超えた会社社長、彼女は「クライエントのほうがよほど人生経験が豊富なんだから、どうしたらいいか」と言うので、「教えるなどは全然する必要がない、真剣にその人の話を聞いたらいい」と言われて、彼女は真剣に話を聞くと、その社長はいろんな話をされ、そのうちに、「あなたのような若い人には会社の経営はなかなかわからないと思うが、会社の経営はどんなに難しいか」などと話されるのでそれを聞く。また次の週も来られる。
ところが、人間誰でもそうですが、勢いに乗って話しているとだんだん話が矛盾してきて前に言ったこととずいぶん違うことが出てきて、初めには「会社は少数精鋭でしなければならない」と言っていたのが、次には「できない者も大切にすることが会社では一番大事だ」などと変わってきたので「この前は少数精鋭といっておられましたが」と言うと、「う~ん」と考え込まれる。
そういうふうに言っているうちに自分の考えの矛盾したところをまた考え直す。「この前はこう言ったが実際はこういう意味です」「調子に乗りすぎると人間は言いすぎるが、本当はこうです」などと言い換えられるのをまた聞く。そのうちに60歳を超えたそのクライエントがその院生を〇〇先生と言っている。(88ページ~)
CBLコーチング情報局は、「コーチングの3つの領域」の中で、主としてエグゼクティブコーチングにウエイトを置き解説しています。エグゼクティブの多くは年配であり、コーチの方が年若という状況が当たり前です。このシチュエーションにあって、実際のコーチングが機能していく典型例が上記に描かれています。
臨床心理士向けの講演ですが、河合さんが話す内容は、まさにエグゼクティブコーチングのワンシーンですね。続きを引用します。
先生の方が遥かに年下。先生は何も教えていない、ひたすら聞いている。しかし、その「ひたすら聞いている人」が自分の先生だとクライエントが意識するということ、そんなことはその人の人生になかったということではないかと思う。これだけ真剣に聞いてくれ、真剣に聞いているから疑問が出たらそれをぶつけ、それがまた返ってくる。またぶつけるというのは、生きた人間として真剣に聞いているという、そのことによってその方は自分で自分の人生をいろいろ考えて行くということが起こるわけです。
傾聴は「スキルを超える別格のスキル」であると説明してきました。年の差はあくまでも外形的なものです。そのことに囚われる必要はないと、河合さんは語ります。
講演のテーマは「臨床心理士への社会的要請をめぐって」ですが、河合さんの次のメッセージを「コーチングへの社会的要請」として受けとめても、河合さんはにこやかに笑ってくれると信じ、引用することにします。
「真っ直ぐにきちんと逃げずに話を聞く」ということ、これがなかなか社会の中で行われていない、これは家庭の中でも行われていない、会社の中でも行われていない、友人同士でも行われていない、それをわれわれはきちんとすることだと思います。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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