河合隼雄さんは『＜心理療法コレクションⅥ＞心理療法入門』のなかで「こころの現象と因果律」という章を設け、冒頭で「不可解と思える人間のこころの現象に、原因―結果の連鎖を見出して、それを用いることによってこころの問題を解決しようとした。それによって心理療法が行われてきた」と、語ります。
ただし、「父親の酒癖が悪いので、子どもが非行をするようになった」、と言われる場合でも、中には模範少年の子どもも存在する訳で、「原因と結果が一対一に対応しているのではなく、父親の酒癖の悪さは、少年非行の原因のひとつとして考えられることが多い、くらいのことしか言えないのである」と、原因の探求を第一に考える心理療法の限界を指摘します。
そして河合さんは、ロジャーズが「来談者中心療法」提唱したことが画期的であった、と続けます。
そうすると、心理療法家はどうすればいいのか、ということになる。このような点から言えば、ロジャーズの考えたことは実に画期的であった。彼の言う「必要かつ十分な条件」を満たすとき、すべてのクライアントは自らの力によって治癒への道を見出すというのである。したがって、治療者はクライアントの訴えに対して、その原因など考える必要がないのである。
この際、非常に興味深いのは、ロジャーズが彼の言う条件を満たす限り、クライアントは治癒に向かうということから、「もし～ならば、～になる」という仮説を提唱し、それは検証可能であるので、彼の療法は「科学的」であると主張していることである。（116ページ）
ユンギアンの河合さんですが、この章ではロジャーズについての解説が多く登場します。
精神分析を批判してロジャーズの考えが生じてきたことは既に述べた。彼が「もし～ならば、～になる」という仮説を提出し、それを検証し得ることによって、「科学的な」心理療法を確立できると主張したことは画期的であった。しかも、それが当時アメリカにおいて強力であった精神分析の考えを、まったく必要としないとしたのも画期的なことであった。しかし、この場合も厳密に考えてみると、彼の提出する「共感的理解」（empathic understanding）とか、「自己一致」あるいは「純粋」と訳されていること（genuine）にしても、それらは近代科学の概念として認められるものではないことが明らかである。この点は後年になってロジャーズ自身も認めている。（122ページ）
科学を大きくカテゴリー化した場合の呼称として、「自然科学」と「社会科学」に分けられます。フロイトは自身の「精神分析」は「自然科学である」とのスタンスを貫いています。心理学は広範な分野で構成されますが、今日では「学際的」な視点で捉えられる向きが多いようです。河合さんは、ロジャーズの「科学性」は「自然科学」とは異なることを指摘しているのですね。
さらに「科学的心理療法」として登場した「行動療法」についても、近代科学と異なることをコメントします。
行動変容の段階をプログラムに沿って行うにしても、その間に、クライアントは自分の人間関係や過去の生活史などを語ることが多く、その内容や、それを聴く治療者の態度なども、治療の要因として考えられる。そのような点で、これは近代科学とは異なるものである。（123ページ）
そして河合さんは、因果律について柔軟な捉え方を読者に開示します。まさに「学際」の視点であり、リベラルアーツとしての「河合さんの心理療法」です。
深層心理学の諸理論も、最初は「科学的」な因果的法則を見出す考えで出発した。しかし、結局のところは、その方法論から考えても、それは根本的に異なることをしているのである。その目標はあくまで、個人の「主観的」な納得に向けての説明である。これが宗教の宗派と異なるところは、あくまで個人の体験を大切にすることと、ドグマによる説明ではなく、個人の体験にしろそれが理論と異なる結果になったとき、理論の改変もあり得るということである。（125ページ）
心理療法と科学性の関係を紐解いてみました。CBLコーチング情報局はコーチングを語ることですから、最後に次のメッセージを添えることにします。
心理療法から発展してきたコーチングは、「学際としてのリベラルアーツ」である！
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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