河合隼雄さんは「学問=方法論」の視点を「硬すぎる」と批判的に捉えます

(河合)
……だから、今までの、いわゆる学問体系というのは、まず方法論が明確であって、方法論によって皆を安心させて、つまり「私はこういうことをしているから、結果はこうなんですということをわかって、その結果、こういう答えが出ました」と言うと、皆安心したわけでしょう。それと違うことやっているんですよ。だから、私の考えでは、今までのアカデミズムの世界にいちばん、はやらないものでしょうね。
(鷲田)
逆の学問というものが、ある時代の中で、あるいは、社会の中で持つ意味を考えたときに、実はこれからいちばん大事になる知ですよね。

前回より、『臨床とことば』の第3章の中心テーマである、4番目の見出し「人と人の距離感をどうとるか」について、コーチングの解説を始めています。
冒頭の引用について、読者のみなさんは、どのような印象を持たれるでしょうか。河合さんは熱を帯びてきました。「臨床家」を自認する河合さんは、アカデミズムのあり様について、クリティカルな視線を強く打ち出し言葉にします。続けます。

(河合)
しかし、今鷲田さんが言われたように、そのときにそういうことをはっきり言っておかないと、それを今までどおりのアカデミズムの判断からすると、そんなものは全然価値がないということになってしまうわけですね。あるいは、むちゃくちゃになってしまうわけですね。方法論も確立していないのか、ということになってしまうでしょう? だから、ちゃんと言って、やっていくことをやらないと。それが、これからすごく大事だと僕は思っているんです。

「CBLコーチング情報局」は、コーチングをリベラルアーツと捉えています。このワードは、近年認知が高まっているので、そのまま用いています。

河合さんは、「学問=方法論が明確である」というアカデミズムの判断を、「硬すぎる」と批判的に捉えます。「臨床心理学者」として、たくさんのクライアントとの「臨床現場」を経験されてきた河合さんは、「自由度を保った柔らかい視点」を持つことの重要性を説かれます。それは、手を変え品を変え(さまざまなバリエーションで)、私たちに届けてくれています。
第2章の「ことばを掴んでしまう」の中にあった河合さんの言葉を再掲してみましょう。

アートとテクノロジーの間みたいなものになってくるんですね。テクノロジーというのは決まりきってるわけです。アートは、本人そのものがすごく関わってきますよね。でもいろいろ理屈はありますから、そこまで個人的でもないんです。だから僕は、アートとテクノロジーの間にあるという言い方をしている。中間的なもんだと。

第3章は、アカデミズムが抱えている課題に正面から対峙し、新しい「リベラルアーツ」の世界を、分野を異にするお二人(アカデミズムに所属する学者同士)が、共感を伴にして創り上げていこう、という意欲的な対話となっていることが感じられます。
河合さんのパッションに鷲田さんも応えます。続きを引用し、次回につなげることにしましょう。

(鷲田)
今ヨーロッパなどでは、「ソクラティック・ダイアローグ」という運動が起こりつつある。つまり、自分の中で反省する哲学ではなく、人と対話する中で、ある論理を紡いでいく、そっちのほうに哲学の軸をもう一度移し直そうという運動がありまして、私の同僚で臨床哲学の研究室の方がやっています。これはケッサクなんですけれども、学者の間でやるのではなくて、企業に行ったり、一番面白いのは刑務所に行って、それこそ幸福論なんかをディスカッションするわけです。刑務所なんかでは、すごいうまくいくらしいです。皆真剣だから。……


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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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