フロイトの「私」はラテン語に翻訳されたことで世界化につながった!?

<心理療法コレクションⅤ>ユング心理学と仏教』の中の一節です。

読者の皆さんは、「私が誰か」(Who am I?)という質問を自分に対してした場合、すぐに答えられると思います。「私は心理学者である」とか、「私は教授である」とか。しかし、「「私」とは何か」(What is “I”?)という質問に答えられないのではないでしょうか。私がここにわざわざ、“ ”で囲んで示している私、それは私という存在全体を指しています。私の意識も無意識も、身体も、それに何か他のものもあるかもしれませんが、ともかく、ここに立っている私のなかに含まれているものすべてを指します。その「私」は普通に言う私の知らないことに満ちている、と言えます。(117ページ)

本書のⅢ章、「「私」とは何か」は、河合さんのこの問題提起からスタートします。河合さんは学生時代に興味を持ったフロイトについて語ります。

学生時代に、私はフロイトの本を読んで興味を持ちました。少しずつ学んでいる間に、英訳ではego(日本では「自我」と訳したり、エゴと表記したりする)とされている語は、もともとフロイトの原典ではIch(I)と書かれていることを知り驚きました。フロイトは、Ichとes、つまりIとitを区別して語ります。

フロイトが活躍したウィーンはドイツ語圏であり、著作はドイツ語で書かれています。英語のIはIchです。その「私」にIch以外のitであるesという概念も同居している、とする視点に河合さんは啓発されます(CBLコーチング情報局でも、フロイトが「心=私」を層構造で捉えていることを解説しています)。
ユダヤ人の世界で閉じていたフロイトの精神分析は、英語に翻訳されることで英国や米国で認知され、そうして世界に広がっていったことが指摘されています。
河合さんはさらに、その「翻訳」の妙もある、と語ります。

フロイトがIchとesと呼んだことは、フロイトの文章が英語に訳されるときに、egoやidとラテン語に置き換えられました。このことによる利点は、人間が自分の心のことを考えるときに、相当に対象化することが可能になったことです。このことによって、人間の心を「分析」することが可能になり、分析を通じて、人間の心のダイナミズムやその構造などを知ることができました。深層心理学の各派はその結果として生じてきたものです。このような考えによって、神経症に対する理解が進み、心理療法が発展したことも事実です。

ラテン語は、古代ローマ帝国の公用語であり、帝国滅亡後もカトリック教会の公用語や学術用語として定着し、近代まで使われていました。日常使用しない言葉に置き換えられることで、かえって「抽象化」され、「権威付け」される、ということかもしれません。
予断ですが、村上春樹さんが毎年のようにノーベル文学賞候補として名前が挙がるのは、世界中のたくさんの国の田舎の本屋さんに、その著作(もちろん翻訳されて)が置かれているから、とも言われています。

フロイトに興味を覚えた河合さんも、ユング派分析家として実践を積み重ねていきます。その過程で、ユングの「私とは?」を深めながらも、日本人の心の中にある「私」との違いを解明していきます。次回のキーワード解説では、そのあたりを紐解いてみましょう。


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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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