
(中沢)
きょうは仏教と戒律の話をしようと思います。戒律といえば性の戒律がいちぱん重要なテーマです。でもそれは仏教だけじゃなくて、あらゆる宗教にとっても悩みの種であるし、避けて通れない問題です。
今回より、河合隼雄さんと中沢新一さんの対談集『仏教が好き!』の第3章に移ります。この第3章のタイトルは「仏教と性の悩み」であり、独立した章として、お二人の“熱心な”対話が収録されています。引用は、最初の見出し「仏教における性の戒律」の書き出しです。仏教をベースとしつつも、世界のさまざまな宗教が登場します。「あらゆる宗教にとっても悩みの種」と、中沢さんは指摘します。
このフレーズに接したとき、間永次郎さん執筆の『ガンディーの真実~非暴力思想とは何か(2023年9月・ちくま新書)』が想起されました。同本の第4章は「性の真実~カリスマ性の根源」のタイトルが付されています。ガンディーがどのように「性」を捉え、実践していたのかが、リアルに記述されているのですね。「帯」に、中島岳志さんの「今後、この本を抜きにしてガンディーを語ることはできないだろう」の一文が添えられています。加えてカバーには次の文言が…
贅沢な食事をしないこと、搾取によってつくられた服を着ないこと、性欲の虜にならないこと、異教徒とともに生きること、そして植民地支配を倒すこと――。ガンディーの非暴力の思想はこのすべてを含む。(中略)後の世代に大きな影響を与えた思想の全貌と限界に迫る。ガンディー研究を一新する新鋭の書!(太字は筆者)
「思想の全貌と限界」という、ワクワクする文言が踊っています。ガンディーは、「人間のあらゆる性行動は、性的欲望に駆動されている」と捉えます。それは「実体のない突発的な心理作用ではなく、人間身体の内部で生成され続ける“生命エネルギー”」であると。
ガンディーはこのような生命エネルギー=神聖な力を統制する(不本意に漏洩しない)ための実践を、ヒンドゥー教やジャイナ教の伝統的な概念・実践として知られる「ブラフマチャリヤ」(原義は、宇宙原理である「ブラフマン(梵))」に至るための「チャリヤ(行為)」で、一般的に「禁欲行」や「独身(期)」を意味するの語によって説明した。ガンディーは生命エネルギーを可能な限り浪費することなく、公益のために蓄積していくならば、社会変容を引き起こす巨大なエネルギー(それは原子力にも匹敵するとされた)に拡大していくと考えた。武力・軍事力に依拠せず、大英帝国を駆逐する非暴力革命の鍵は、この生命エネルギーの集積にあるというのが南アフリカ滞在期間以降のガンディーの一貫した信念であった。
ここでもブラフマンが登場します。「性の力」をどのように解釈するかは、人それぞれでしょう。同本で間さんは、ガンディーは若かりし頃、その駆動力の制御に失敗したことを、赤裸々に綴っています。そのような「実体験(失敗?)」も踏まえて、この「性の力」を「生命エネルギー」に転化し、公益のために「活用」することは可能であるとの「思想」に至ったわけです。この思想は「ブラフマチャリヤ思想」と呼称され、ガンディーの「カリスマ性」の根源であると、間さんは紹介しています。
その一方で間さんは、「ここで思想形成上の一つの論理的な矛盾が起こっていることを指摘しておくことは重要である」と述べています。「生命エネルギー」は、ポジティブな印象を帯びた言葉です。一方で性的エネルギーは、「暴力的なエネルギー」にもつながることが指摘されますから。「果たしてガンディーの考え大衆はを受容しているのか…」と、疑問を呈しているのだと筆者は解釈しています。
ガンディーは、自分の行動力の根源を「性的エネルギー=生命エネルギー」として悟りを開きます(ユングもこの考えに近い)。その力を糧に、ガンディー自ら、徹底的に実践した「贅沢な食事をしないこと、搾取によってつくられた服を着ないこと、異教徒とともに生きること、そして植民地支配を倒すこと――」に、大衆は感銘を受け、「非暴力革命」の大きなうねりが形成されたのだと。筆者は受けとめています。
「」内の太字表現は、最初でも紹介した同法のカバーに印字されたPR文の再掲です。ただし“性欲の虜にならないこと”のみは、ここでカットしています。つまり、ガンディーは実践できたが、大衆は、そこ(性欲の虜にならない)にもこだわってガンディーについて行ったのではない、と想像していますから。
ガンディーは「総合的ですごすぎる人」です。「性欲」をも超越してしまった(笑)。大衆はガンディーにはなれない。宮沢賢治の『雨二モマケズ』ではありませんが、「ガンディーのようになりたい!」という「生命エネルギー(性とはまた別の)」によって、行動につながったのだと思います。
次回は、『ガンディーの真実』から『仏教が好き!』に戻って、「性」を考えてみようと思います。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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