（吉本）
対談するにあたって、実は何も準備してきていないんです。はじめは、河合先生のご本を読んで、カウンセリングの現場のことなどをお尋ねしようと思ったのですが、でもそれでは結局中途半端なことになるので、やめようと思って。やめてどうするかは考えていなかったのですが、でも、対談というものに慣れてしまっているから時間をもたせて字数を言うことはできるけれど、一冊の本にするのだったら嘘をひとつも言わないで全身全霊でやってみようと。
河合隼雄さんと吉本ばななさんの対談『なるほどの対話』を取り上げる2回目です。
前回は、吉本ばななさんのことを「某作家」とし、最後の最後に、「吉本ばななさん」であることを明かすという、筆者なりに凝った流れで書いてみました。しかも、310～312ページを引用するという「おわりのおわり」から始めています。300ページより「対談を終えて」が挟まれ、文庫本として発刊された際に、そのあと「文庫版あとがき」で〆られる全312ページ構成が同書の体裁です。
河合さんは312ページの1行目に「ばななさんは珍しくウソを言わない人だ」、とコメントしています。引用した対談の口火を切る言葉（同書10ページ）は、まさに「ウソを言わない」ばななさんがいきなり現れる真骨頂です。この対話が交わされた翌年に、73歳の河合さんは文化庁長官に就任します。一方のばななさんは37歳。
この「コーチング大百科」で、過去1回だけ吉本ばななさんの対談を取り上げています。＜吉本ばななさん（59歳）と中沢新一さん（74歳）の対話は「とってもいい」＞と、あえて年齢を付し、吉本隆明さん（ばななさんのお父さま）を語り合う、穏やかな対話の流れを紹介しています。
一方、『なるほどの対話』のばななさんは30代後半。「この思い出を抱いて、私もかっこいいおばあさん目指してすてきなバカロードを歩んでいこう。その中でまた河合先生に会えるときは、いつでも宝物を見つける気持ちになるだろう（同書311ページ）」と、「ばなな語録」がまた一つ生まれます（笑）。
若くして鮮烈な作家デビューを果たしたばななさんが、「スランプは存在しない」と感じさせるほど、素晴らしい作品を発表し続けていた頃です。世界的な文学賞も贈られ、その勢いが、自然なスタイル（being）として顕れているのが『なるほどの対話』であると、筆者は受けとめています。
吉本ばななさんの解説が少し続きました。「一冊の本にするのだったら嘘をひとつも言わないで全身全霊でやってみよう」、という決意に、河合さんは何と答えるのか？ 続きを引用します。
（河合）
ぼくは全身全霊で嘘をつく方だから（笑）。
（吉本）
はい（笑）。
（河合）
ちょうどいい感じですな。
ばななさんも“すごい”のですが、河合さんの“すごさ”は格別です。「いきなり」ばななさんの心を掴む！ 河合さんはウソツキクラブの会長ですから、この言葉は「ウソ」ではない（笑）。このような「ユーモア」を自由自在に、臨機応変に、自然体で言語化してしまう河合さんは、やはり「対話のマジシャン！」（笑）。
さて、『なるほどの対話』の最初の見出しは「子どもの頃」。「東京の下町、文京区の千駄木というところで育ったのですが、本当にワイルドだったんです。竹馬に乗ったりして（笑）。……最終的には、自分の背より高い竹馬に到達しました」と、幼稚園時代～のワイルドぶりから対話はスタートします。
ところで、本日は2025年の大みそか。「コーチング大百科」の新年スタートは5日（月）を予定しています。『なるほどの対話』は、父親である吉本隆明さんの子育ても伝わってくる、ばななさんの幼少期からはじまります。大らかだった昭和の時代です。それから半世紀…まさに激動です。
生成AIはこの先、どのような進化を遂げるのか？ 未来はミステリアスそのものです。コーチングは、未来をポジティブに描きます。これからもコツコツ「コーチング大百科」を綴ってまいりますので。
皆さま、よいお年をお迎えくださいませ。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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