語りには書字にはないものがある。声である。

<顔>とは顔面のことではない。<顔>を思い浮かべるとき、顔面の子細が浮き上がってくるわけではない。毎日見なれている家族の顔でも眉毛がどうだとか耳のかたちがどうだとか言われると、それを図解することも、ことばで再現することもできない。<顔>を知っているということは、その造形を細部まで熟知しているということではないのだ。

前回より『臨床とことば』第4章7番目の見出し、「声の肌理(きめ)」について、コーチングの解説を始めています。その最後は、次のように〆てみました。

「声の肌理」に想いを込める「文筆家」でもある鷲田さんを感じてみようと思います。

このタイトルは凝っています。「きめが細かい」「きめが粗い」という表現は、日常で多用されます。ただし、「きめ」と言葉にしたとき、漢字の「肌理」が脳裏に浮かんでくる人は少ないでしょう。鷲田さんはあえて漢字の「肌理」を使っています。ここには深い意味が込められています。

「声の肌理(きめ)」は4ページで構成されています。ところが鷲田さんは、3ページの半ばあたりから、1ページにわたって、「声」ではない<顔>について、微に入り細に入り、言葉を重ねるのですね。
冒頭の引用は、その始まりです。転じたのは、その直前で声の“きめ”を一旦否定しているからです。

そう、声の“きめ”とでも言うべきものが、顔も声も、ということだろうか。いやちがうと思う。声がそのひとの<顔>として現れてくるのだと思う。

「肌のきめ」を一旦否定した鷲田さんは、「きめ」を「肌理」に変えて、「肌の肌理」にたどり着きます。

そしてだれかの<顔>はときに、その漠とした後ろ姿でも掌(てのひら)のたたずまいでもありうる。だれかの<顔>はそのひとの顔面のことではなく、そのひとがわたしにふれるときのその気配とでもいうべきものだ。だから声もそのひとのことを想うときにかならず響いてくるものであれば、それはそのひとの<顔>だと言ってよい。
「きめ」は「肌理」とも書くが、まさに声は皮膚にふれてくる他者の<顔>なのだ。

「声の肌理」が、あえて<>を付した<顔>につながりました。
筆者は哲学者の鷲田さんを「文筆家」でもある、として今回の解説を試みています。いかがでしょうか。「凝り過ぎのコンテクスト」として、捉える向きもあるかもしれません。筆者はそうではなく、臨床心理学者で、かつ「文筆家」の河合隼雄さんに啓発された鷲田さんの「文筆家」としての本領が発揮されている、と感服しています。言葉を尽くす哲学者の相貌と相まって、鷲田さんの世界が広がっていきます。

「肌の肌理(きめ)」は、つぎのようにまとめられます。コーチングのコーチは、<声>がもつその力を信じ、クラアントに寄り添うのです。

語りには書字にはないものがある。声である。書字にかたちがあるように、語りには声がある。語りにおいて、ことばは意味を含むものとしてだけでなく、声としても発せられる。そして声は、語りにおいて意味を超えた力を持つ。臨床のことばについて考えるときに、語りの<意味>(text)についてのほかに、語りのこの<声>(texture=きめ)についても考えておく必要がある。


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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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