学生の頃、哲学の本とか人類学の本なんかに関心を持って、構造主義を勉強し始めたら、これはまったく仏教とつながるのではないかって僕は思ったんです。レヴィ・ストロースの本を読んだ時。わあっ、この人、仏教徒だと思ったし、それからジャック・ラカンの本を読んだら、わあ、この人も仏教徒だと思った。なぜかというと中観（ちゅうがん）のことを言ってるからです。
前回より、河合隼雄さんと中沢新一さんの対談である『ブッダの夢』を引用し、コーチングを語ることをスタートしています。その第1章「仏教と癒し」は、7つの見出しから構成されています。引用は、2つ目の見出し「構造主義は仏教につながる」の中で、中沢新一さんが、その「つながり」について語っているところです。ここで中沢さんのプロフィールをWikipediaから引用してみます。
中沢 新一（なかざわ しんいち、1950年5月28日 – ）は、日本の宗教史学者・文化人類学者。 千葉工業大学日本文化再生研究センター所長。京都大学こころの未来研究センター特任教授。秋田公立美術大学客員教授。
チベット密教と構造主義をつなげた『チベットのモーツァルト』（1984年）が、斬新な切り口で話題になる。現代思想界の代表格として活躍。著書に『森のバロック』（1992年）、『野生の科学』（2012年）など。
中沢さんは「つながり」を「中観」に見出しました。この意味を生成AI（Copilot）で調べてみると、「二元論（二項対立）を超えた中道の立場を指します。つまり、相反する二つの極端を避け、その間の中道を取ることを意味します」とあります。筆者は、「中観」は「異質の調和」としてもつながっていると感じました。
中沢さんも河合さんもベースは学者です。ですが、筆者は「カテゴリーを超えていく柔軟性と広がり」を、お二人に感じています。思想のベースに“そのこと”がありますから、お二人の対話はとてもスリリングです。「予定調和」は存在しないのですね。まさに「リベラルアーツ」です。コーチングとつながりました。
中沢さんは、「家がキリスト教だったんですね。かなり古いキリスト教で、幕末期からずっとクリスチャンだった家です」と語ります。その中沢さんは「決定的に仏教に転向」することになります。ただ「決定的」と言葉にしながら、「キリスト教の自力と浄土真宗が教えてる他力思想のちょうどうまい中間点があるかもしれない」と、探求を開始するのです。
それはどこにあるのだろうという探求が始まったのが二十代の後半ぐらいで、それから僕は、本格的にチベット人のところへ行き出したんです。
実は中沢新一さんのことを取り上げようと思ったのは、『新潮2024年05月号』にある「中沢新一+吉本ばなな」～「吉本隆明から託された『精神の考古学』」と題された対談を読んだことで、本棚の奥から『ブッダの夢』（2001年出版）を取り出し、再読したのがきっかけです。『ブッダの夢』は、1991年に交わされた対話が収められていますから、中沢さんが41歳の時です。
吉本ばななさんは、父親の吉本隆明さんが中沢さんを「大将」と呼んでいたことを、次のように語っています。それを受けた中沢さんの言葉も引用し、今回のコーチング解説を終えることにしましょう。
（吉本）
うちの父が中沢さんについてよく語っていたのは、「あの大将は本当に行って、やってきたんだよ」ということでした。「行って、やってきた」。この言葉に集約されるように、たぶん父は、中沢さんがチベットで経験したことをもとにして文章を書いていることを、一番尊敬していたんじゃないかなと思います。「大将」というのは、父が気に入った相手にだけつけていた呼称でした。だから、父が「大将」と誰かのことを呼ぶときには、きっとその人のことが好きなんだろうな、と周囲もすぐに分かるんですね。
（中沢）
在野の知識人として生きてきた吉本さんは、そもそも東京大学のような権威的アカデミズムに関わっているような人間を毛嫌いしていました。最初はそれだけで嫌われちゃうのか、と内心心配していたのですが、「中沢新一は東大を追い出された人だ」という認識で、むしろ好感を持ってくれたようです。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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