やっぱり自分は、悪人で助からない。修羅ですよね。

(中沢)
アングロサクソンって、犯罪にかけては天才的でしょう。(中略)
それでいざ見つかった時には、「私はたしかに人殺しが好きなんです」って。切り裂きジャックとか、ああいうセンスがあるんです。賢治の「署長さん」は、今のイギリスやアメリカの連続殺人魔とかああいう人たちの心理に通じている、強烈な悪を堂々と主張するところが、これは日本人ばなれしている。
(河合)
それは宮沢賢治は、その点では非常に日本人ばなれしていたものを持っていたと思いますね。

前回より、河合隼雄さんと中沢新一さんの『ブッダの夢』第2章の2番目の見出し、「『毒もみのすきな署長さん』の悪」に移っていますが、特に作品には触れていないので、今回はその内容について語ってみようと思います。
引用は、3ページの語り合いの最初あたりで、同作品に登場する「署長さん」の人物像を、中沢さんが指摘するところです。「毒もみ」は、乾かした山椒の皮の粉と、もみじの木灰とをまぜてつくった「毒の粉」で、それを水の中へ手でもみ出すと、それを食べた魚は白い腹を上にして浮かび上がるのですね。同書の書き出しです。

四つの冷たい谷川が、カラコン山の氷河から出て、ごうごう白い泡をはいて、ブハラの国にはいるのでした。四つの川はブハラの町で集まって一つの大きなしずかな川になりました。

この国の法律の第一条は「火薬を使って鳥をとってはなりません、毒もみをして魚をとってはなりません」です。そこに新しい署長さんが赴任してくるわけですが、宮沢賢治は「毎日ていねいに町をみまわりました。」と、その仕事ぶりを記します。
ところが…「いっこうに魚が釣れなくなって時々は死んで腐ったものも浮いていました。」という現象が発生します。「けれども署長さんも巡査もそんなことがあるかなあというふうでした。」と物語は展開します。

ブハラの住人が「毒もみ犯人は署長じゃないか」と騒ぎだしたため(状況証拠らしきものがさまざま出てきて…)、プハラの町長さんも仕方なく、家来を六人連れて警察に行って署長さんに会うのですね。町長が問い詰めていくと、署長さんは自白するのですが、その時のシーンが秀逸です。

「さあ、そうそう、ありますとも。ちゃんと証拠があがっています。」
「もうおわかりですか。」
「よくわかっています。」
署長さんは町長さんの前へ顔をつきだしてこの顔を見ろというようにしました。町長さんも愕きました。
「あなた? やっぱりそうでしたか。」
「そうです。」
「そんならもうたしかですね。」
「たしかですとも。」

結局署長さんは裁判にかかり、死刑となります。最後の3行を引用します。

いよいよ巨きな曲がった刀で、首を落とされるとき、署長さんは笑って云いました。「ああ、面白かった。おれはもう、毒もみのことときたら、全く夢中なんだ。いよいよこんどは、地獄で毒もみをやるかな。」
みんなはすっかり感服しました。

いかがでしょうか。宮沢賢治がこの小説で何を言いたかったのか…俄然興味が湧きますね。
冒頭の引用のあと、中沢さんと河合さんは、日本人(現代?)の親鸞観(悪人正機)との違いを指摘し、次のように対話が進みます。続きを引用して、今回の解説を終えることにします。

(中沢)
それで、いやあ楽しかったって(笑)。
(河合)
『毒もみのすきな署長さん』では、最後に「みんなはすっかり感服しました」と書いてあるでしょう。
(中沢)
でも、悪というのは、そういうものなんでしょうね。
(河合)
賢治の時代には、「悪」は大事なテーマだったんじゃないでしょうか。そして、そこからすぐに悪人正機にまでいかないままで、背負っているというのかな。やっぱり自分は、悪人で助からない。修羅ですよね。


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