「悪口の応酬」は、滋味あふれる味わい深いエッセイ

河合隼雄さんの『大人の友情』の25話は、7番目のテーマである、「碁がたき、ポンユー」の2話目である「悪口の応酬」です。前話は『広辞苑』ではじまり『広辞苑』で終わっています。河合さんは、麻雀というゲームを通じて「お互いに気心が知れる」関係について、語ってはいるものの、「何かを示唆する」というところまでは至っていない印象です。

河合さんのエッセイは、軽妙な語り口によって心が運ばれていくうちに、最後は「本当にそうだよなぁ~」と、ストンと腑に落ちる箴言で〆られます。2話目となるこの「悪口の応酬」は、その滋味をしっかり味わえるエッセイとなっています。

「どうしてだろう?」という自身への問いかけから、このエッセイは始まります。

友人同士というのは、面と向かうと悪口や軽口の応酬をすることが多い。時に「友人の思い出」などという文を読むと、「彼と会えば悪口ばかり言いあう仲だった」などというのに、お目にかかる。いったいこれはどうしてだろう。

河合さんは「悪口や軽口の応酬」の手がかりを、「親しい間でない限り、そんなことは絶対しない」ということを指摘し、「お前と俺の関係は、こんなことくらいでは壊れないぞ」という、友情の証明なのでは、と推測した上で、「人間の心の奥底」への探求をスタートさせます。

しかし、話はそれだけではない。人間というのは他人の悪口を言ったり、攻撃したりするのが好きなのではなかろうか。好き、とまではいえないにしても、一度もそのようなことをしないでいると、心のなかに何か、おりのようなものが溜まってくるようである。それを公認の場で放出できる、という楽しさもある。それにやられながらも許容してくれる。

ここから「ゲーム」がキーワードとして浮上してきます。

これが可能なのは、これが一種の「ゲーム」なのですよ、という了解があるからである。面と向かって、「あなたは駄目だ」とか、「無能だ」などと言うと大変だ。しかし、これは「ゲーム」の上のことで、あなたの「人格」とは無関係ですよ、という前提がある。そこで、悪口の言いあいを結構、互いに楽しむことができるのだ。

河合さんはこの後で、一つの「北欧神話」を取り上げます。母親フリッグの息子であるバルデルが殺されてしまうところまでのストーリーを紹介します。

ここから後の物語も興味深いが、後は省略して、ここまでのところで考えると、遊びとして誰かを攻撃して楽しんでいるとしても、決して「投げてはならないもの」というのがあるのだ。それをすると、遊びはたちまち消滅し、殺人事件になってしまう。
実際にあった例をあげてみよう。麻雀を会社の仲間でしていた。例のごとく、互いに悪口や軽口のやりとりをして大いにもりあがっていた。そのうち、そのなかの一人が、「きたない手をやるなぁ、お前は仕事もきたないからなぁ」と言った。この一言が致命傷となり、二人は絶交してしまった。

ゲームを日本語として用いる場合、スポーツや娯楽としてのゲームがイメージされ、肯定的に捉えることが多いのですが、本来の英語には、ネガティブなニュアンスも含まれています。CBLコーチング情報局では、エリック・バーンの交流分析を紹介しています。人と人のやりとりには3つの基本形(平行なやりとり・交差したやりとり・隠されたやりとり)がある、とバーンは言います。
このなかの「隠されたやりとり(交差的裏面交流)」をバーンは取り出し、これは無意味なやりとりの「ゲーム」に過ぎず、この関係を脱して健全な「平行的やりとり(相補的交流)」に変えていく必要がある、という「ゲーム分析」を提起しました。

ルールが機能してこそ「健全なゲーム」は成り立つ… 河合さんのこのエッセイに込められた思いです。合点至極ですね。

どんなものを投げても大丈夫という遊びでも、投げると相手が死ぬものがある。どんなに悪口の投げあいを楽しんでいても、投げつけてはいけない言葉がある。このことを、われわれはよく知っていなくてはならない。バルデルの突然の死のように、友情は一挙に消滅してしまうのである。


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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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