河合隼雄さんのエッセイ集である『こころの処方箋』の33番目のタイトルは、「逃げるときは物惜しみしない」です。
前半で河合さんは、「孫子の兵法」ならぬ「河合の兵法」といった趣で、「殿(しんがり)戦」を解説します。
昔読んだことで記憶があいまいなので申し訳ないが、木下藤吉郎が殿軍の役をつとめた話がある。木下の軍のみが城に籠って戦う間に、友軍のすべては引きあげてゆくことになった。どうせそのような城もすぐ落とせるわけで、その勢いをもって追撃しようと敵は思っていた。ところで、夜になると、木下藤吉郎は翌日の戦いにそなえているように見せかけておきながら、兵糧や旗などをすべて棄てて、全軍走りに走って逃げ、本体に追い付いてしまった。
敵軍は翌朝になって城があまりにも静かなので、何か計略でもあるかと慎重に攻め、うまく逃げられたとわかったときは後の祭り、結局、木下軍は一兵も損なうことなく殿軍の役を果たしたことになったのであった。
この後で、「まったくもの惜しみもせずに、すべてを棄てて走って逃げるところが素晴らしい」と、河合さん独自の諭が展開されます。
殿軍をつとめるからには、はなばなしく一戦を交えるのも、ある程度の効果はあるかもしれないが、下手をすると全滅してしまう。それより、無傷で逃げて次の戦いにそなえる方が、よほど効果的である。と言葉をつなぎ…
逃げるとなると徹底的に逃げ抜いて、敵の手の届かぬところまで逃げのびねばならない。ここで、もの惜しみしたり、ぐずぐずしていたりすると、敵に追いつかれてしまう。
河合さんは、「現代社会は戦国時代のような戦いはないが、本質的には同じようなことがいろいろ行われていると言っていいだろう」と、会社や集団の中で「殿戦」は存在しており、その様相について語ります。
人間が集まると、その集団の維持のために、あまり面白くもない仕事を沢山しなくてはならない。それは、その人の属する集団の性質や、集団内の地位によって性質は異なっているが、ともかく「機構維持」のための仕事をやらねばならず、それはいわゆる「ヤボ用」と言われているものである。
人間集団・組織の「リアル」をグリップしている河合さんは、この「ヤボ用」を否定していません。
確かに、それはヤボではあるが、人間が集団で組織をつくるためには、それが必要なことは、全体をよく見、人間というものの在り方を考えると、了解されてくる。
そして「起承転結」の「結」は、「タイトルの意義」をしっかりとグリップしている河合さんの姿が伝わってきます。
だから、すべての人はヤボ用に専念すべしなどと言っているのではない。自分のかかえている課題や関心の在り方によっては、「機構維持」の仕事から、「逃げる」ことも必要であろう。しかし、そのときは相当に何かの利益を棄てる必要がある。絶対にもの惜しみをしてはならない。このことがわからないために、自分は損ばかりしていると嘆いたり、常に正当なことを主張していては、他人に嫌われてばかりいるような人がでてくるのである。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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