（中沢）
チベットの密教というのも、ある意味で宗教を否定するんです。信仰も否定してしまうんですね。そういうのは嘘だと。僕は宗教学とか宗教のことをやっているけども、宗教家とか宗教の団体に入ってしまった人のところに絶対入れないんですね。ああいう生き方を勉強してしまったということもありますし、バシュラールみたいに、パイをこねながら哲学している人が昔から理想だったんですね。あれも道草の哲学なんです。
河合隼雄さんの、「ああ、そうですね。僕らはミチクサイストというのかな（笑）」という言葉にインスパイアされた中沢さんが、常日頃「思っていること」の言語化を、まるで“パイをこねる”ような言い回しで、「自分の道草ぶり」を語り始めたところです。
河合さんに「思いを伝えよう」と、中沢さんの言語化がこのあとも続きます。気づいたことがあります。5月28日に、＜『チベットのモーツァルト』は、前衛的理論でガチガチに武装されていた！？＞というタイトルで公開した内容を思い出しているのですが、74歳の中沢さんが、30代のとき書いた『チベットのモーツァルト』を振り返っている言葉です。
（中沢）
だから、自分を守るためにあえて前衛的理論でガチガチに武装して書いたのが『チベットのモーツァルト』でした。いま振り返ってみると、全身に鎧を着けていたようなものです。大切なものは全部、内側へ隠していたんだから。でも、それから長い年月が経ち、もうそんな鎧なんて意味がなくなりました。
『ブッダの夢』で「自分の道草ぶり」を語っている中沢さんは41歳です。つまり「前衛的理論でガチガチに武装している」中沢さんは健在で（笑）、むしろ「武装の強度」をさらに増しているような「言語体系」をつくり上げているように感じるのですね。
だからこそ当時、知性に憧れるスノッブな若者たちを虜にしたわけです。筆者も、中沢さんが繰り出す「難解なコンテクスト」を、理解ができないにもかかわらず、憧憬を込めて、その文字を必死で追っていたことを、思い出しています（笑）。
続く、若かりし中沢さんの「難解なコンテクスト」が繰り出される「道草論」を引用します。たくさんの人名が登場します。Wikipediaにリンクを張っておきましょう。なお、インペリアリズムは「帝国主義」、ファンダメンタリストは「原理主義者」と訳されます。
今回は「言語体系のバリエーションについて学ぶ」という流れになったようです。コーチングはリベラルアーツですから「自由学芸の回」ということで、受けとめていただくと幸いです。
（中沢）
…… 漱石の中にもよく職人というのが出てきますが、僕は職人がやる科学というのがすごく好きなんですね。そういう科学というのは、インペリアリズムとはおよそ無縁ですよね。宮沢賢治なんかもそうですけど、ああいうふうに半分百姓とか技術者で、しかもすごく科学的な才能をもっている人のやっている科学というのが好きなんですね。科学の歴史の中でも、たとえばデザルグさんというのは射影幾何学を発明したけれども、もともと砲兵隊長だった人でね。ノーバート・ウィーナーも技術者みたいな人ですし。あるいは物理学者でも、シュレーディンガーみたいな職人ぽい人。ああいう純粋科学者ではない感じの人がやっている科学。さっきの話で言うと、道草をくわないで、ファンダメンタリストになってしまうような科学者ではないあり方が可能だと思うんです。……
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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