「運命」は、その受けとめ方によって、全く異なるものになっていく

河合隼雄さんのエッセイ集である『こころの処方箋』の30番目のタイトルは、「同じ“運命”でも演奏次第で値段が違う」です。
河合さんは冒頭で、「ベートーベンの運命交響曲を、ベルリンフィルが演奏するのと、日本のオーケストラ、あるいは、大学生のオーケストラが演奏するのとを比べると、随分と値段が違う」と語り、次のように言葉をつなげます。

いったい何を言い出すのか、と言われそうだが、今回言いたいことは、たとえ、人間にとって運命がきまっていたとしても、その運命の生き方によって、まったくその人生は異なるということである。

このコラムのテーマは「運命をどう捉えるか?」のようです。河合さんは、「運命はある、と考えるのが好きな方である」と述べ、そして外国で実際にあった「事例」を紹介します。

ある一卵性双生児の片方は大司教となり、片方は大盗賊となった例があった。調べてみると、二人ともほとんど時を同じくして若い時に家出をしているが、片方は腹がへって窃盗にはいったところを、偶然に盗賊に見つけられて、その集団にはいり、そこで頭角を現して大盗賊になった。これに対して、片方も盗みにはいったが、そこは教会で、そこの神父にさとされて改心し、遂には大司教になったという。

異なる環境によって「運命」も変わってしまう、と素直に感想を述べてしまいそうですが、河合さんの解釈は“ひねり”が入ります。

先程の大司教と大盗賊にしても、その後、司教の方は地位に甘えて贅沢三昧に暮らし、一方、盗賊は前非を悔いて、後は貧しいながら聖者のような暮らしをするかもしれない。似たような「運命」でも、その価値は凄く異なってくるのである。

河合さんはここから、ドイツの大指揮フルトベングラーが来日し、運命交響曲の指揮をしたときのエピソードを語るのですが… それが真実なのかどうか? 筆者としては疑問を持っていることをお伝えしておきます(笑)
フルトベングラーの指揮は、分かりにくかったようで、舞台練習のとき、『運命』の最初の「ダ・ダ・ダ・ダーン」が合わない。困ったマネージャーはドイツに国際電話を入れ、あちらの楽員はどうするのかをききます。すると「何も考えず、フルトベングラーの両手が頭の上で交叉する瞬間があるので、そこから『一、二、三』と数えて『ダ・ダ・ダ・ダーン』とやればよい」との回答を得ます。マネージャーは大喜びで、そのことを楽団員に伝えたのですが、興奮のあまり、「一、二、三」というところを、「一、二、ノ三」と伝えてしまうのです。

さて、演奏会のとき、「一、二、ノ三」でやったので、楽員たちのはじまりはきれいに合ったが、フルトベングラーの指揮とは半拍ずれてしまった。マネージャーは失敗に気づき、どんなことになるかと気が気ではなかった。
演奏が終わると、フルトベングラー氏が気難しい顔で引き上げてきたので、どんなに叱られるかと覚悟していると、大指揮者は暫く沈黙していたが、「この国では『運命』が半拍子遅れて扉をたたくのは、どうしてなのだろうか」と言って、深く考え込んでしまったとのことである。

ここは少し補足させてください。最初の「ダ・ダ・ダ・ダーン」を、ベートーベンは「運命はかく扉を叩く」と、言葉にしたことで有名になったようなのですが、チャットGPTによると、この言葉は「ベートーベンの弟子であるアントン・フェリクス・シンドラーが自分の伝記の中で書いた“捏造”である」との回答でした。
河合さんは、このコラムでの「オチ」として、このエピソード(?)に言及したようです(笑)。最後に、河合さんのこのコラムの〆を引用することにしましょう。

今回は夏バテのせいもあって、後半は真偽不明の話まで紹介することになってしまったが、要は、仮に運命があったとしても、その受けとめ方によって、まったく異なるものになる、ということを強調したかったのである。そして、その受けとめ方に失敗したとしても、真剣にやれば、それはそれなりにまた面白い結果をも引き出してくるのである、ということにもなろうか。
「運命」を嘆いてみたり、何とか変えられないかと無謀なことをしたりするよりは、いかにそれを歌いあげるかを考える方が得策のようである。


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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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