河合隼雄さんのアンソロジー『心理療法<コレクション>Ⅰ~Ⅵ』の6冊は、2009年に出版されています。そのなかの『<心理療法コレクションⅠ>ユング心理学入門』は、最も初期の諭文で1967年のものです。まだ日本ではほとんど知られていなかった「難解なユング心理学」を、どう解説していくべきかを徹底的に自問自答し、「わかりにくい内容をわかりやすく説明する」という、河合さん独自の文体を確立していく原点の書として受けとめることができそうです。
今回の解説は、前回の「元型」の後、「心象(image,Bild)」を取り上げます(筆者注: Bildはドイツ語で写真の意)。
まず、その冒頭を引用しましょう。
心象はちょうど、意識と無意識の相互作用の間に成立するもので、そのときそのときの無意識ならびに意識的な心の状況の集約的な表現ともみられ、その心象の意味をよみとることは、非常に大切なこととなる。(104ページ)
いかがでしょうか。「まず定義を」と感じられる記述ですが、わかりにくいですよね。そしてしばらく、学術的な説明が続きます。そして…
…このように心象は強力なものであるが、ときにそれは非常に難解であったり、明確さを欠いていたり、あまりにも多義的に感じられたりすることも事実である。それゆえにこそ、われわれは心象より直接に得たものから、その具象性を払いおとし、明確さを与えて、洗練された理念にまで高める努力をするのである。(111ページ)
心象の理解を困難にするものとして、その個人性の問題がある。まず第一にいえることは、その心象が生じた個人にとっては、その意味が直接に、強力に感じられても、それを他人に伝えることが非常に困難なことが多い事実である。われわれが夢分析をしていると、その夢のなかの像があまりにも適切なことに感嘆させられることがある。寸鉄ひとを刺す表現に、治療者も患者もともに感心したり、ときには笑い出してしまうほどのことすらあるが、さて、それを他人に伝えるとなると、はたと当惑をせざるをえないことが多い。(112ページ)
もう一度「いかがでしょうか」と質問してみましょう。「あるある」が実感される記述となってきました。「夢」とは、典型的な「意識と無意識の相互作用の間に成立するもの」であり、河合さんは、クライアントとの実際のセッションでの経験を取り上げ、まさに臨場感でその状況を解説してくれました。
「夢」は、自分の脳が作り出す物語ですが、「自分が主人公として登場するのだが、どうしてこのようなストーリーが創られるのか、まったく理解不能だ。文字起こしをして、そのまま書き物にしたら、大作家として評価されるのではないかしら…」と、日頃文才のなさを自覚している人が、真顔で友人に話している姿が目に浮かびます。
コーチングとは、自分の状況を説明しようとしても相手が聞き耳を持ってくれなかったり、聞いているようで、相手自身の価値観で勝手に解釈されてしまい、「それって〇〇だから、△□すればいいんじゃない」と即断され、「何を言っても無駄だ」と感じてしまう日常の景色とはまったく異なる情景を、クライアントと共につくり上げていくことです。それは、コーチとクライアントが「深い対話」を重ねていくことで訪れる関係性です。
河合さんの言う、「寸鉄人を刺す」言葉が次つぎと生み出され、「あるある」が実感できるコーチングセッションを展開できるよう、私たちコーチは、「わかりにくい内容をわかりやすく説明する」能力の獲得に向かって、努力し続けることが必要だ、ということですね。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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