
しかしながら、この「無名」の境地が禅の究極とするところではないことにもまた注意する必要があります。もしこれが究極の境地であるなら、一度言語分節の存在的次元を超え出てしまったら、もう言語など、なんの用もない、無用の長物ということになりましょう。言葉もなければ対話もなく、一切の言語活動はただ純粋に否定的意義においてしか問題にもならないことになるはずでありましょう。なぜなら、言語は「現実」の偽りの図像を描き出してみせる存在的悪にほかならないのですから。そして事実、私はここまで、ただ言語的意味分節の否定的側面だけを論じてきました。だが本当は、言語にたいする禅の見方には、これとは反対の積極的、肯定的な側面もあるのです。
井筒俊彦さんの『意識と本質』の「対話と非対話~禅問答についての一考察」を取り上げ、コーチングを語る9回目です。
1977年にイランの首都テヘランで、英語で講演した内容を、井筒さん自身が日本語に翻訳した講演録が、この「対話と非対話~禅問答についての一考察」です。『意識と本質』は、独立した4つのカテゴリーが収められていますが、その最後…まさに掉尾を飾る377ページ~408ページ…32ページの文量として収録されています。
井筒さんが7割を話し終えた22ページ目のところを、冒頭で引用してみました。
「なぜ、このような細かいことを書くのか…」と思われるでしょう。その理由は、6月30日に公開した<「静」のイメージ「禅問答」は、火花を散らす言葉のぶつかり合い!>の中にあるので、再掲させていただきます。
引用は、全32ページの内容の12ページ目に登場する語りです。「話し言葉」になっているのは、1977年にテヘランで開催されたシンポジウムに登壇した井筒さんの講演を再現したものだからです。(中略)
「異文化間+同一文化圏内+同一言語内」で交わされる対話…つまり、「言語を媒介とするすべてのコミュニケーションには、さまざまの重大な問題が存在しているが、現代の『言語理論・言語哲学』では、その処方箋は見出すことができない」、ということを講演の1/3の時間を割いて語っているのですね。つまり「序破急」の「序」を話し終え、「破」が展開する、そのタイミングの井筒さんの言葉を引用しています。続く「破」の始まりはというと……
つまり、13ページ目から「破」はスタートするのですね。冒頭に引用した22ページ目で、その「破」は終わります。「破」は、座禅による観想を極めると、老子の「無名」の境地(大乗仏教では「空」、禅の言葉は「無」)に至ることを、井筒さんは「言葉」を尽くして話しているのです。
「無名」の境地を語り終えたのなら、講演はそこで終わってもいいのでは…と、筆者は感じました。ところが、井筒さんは、最後の「急」で、ひっくり返すのです。元に戻してしまう。
老子の「無名」、大乗仏教の「空」、禅の「無」は、いずれも「言葉」を超越する世界です。「無」に向かっていく観想の「座禅」を次のように語っています。
座禅とは、言語的に言いますと、まさにそういう言語否定への修行方法です。深い観想のうちに、言語分節の蹤跡が消え去り、あらゆる事物の無が体験されるとき、そのときはじめて歪曲されぬ「現実」が顕現するという考えです。
井筒さんは、「禅」の境地を語るために「破」において、徹底的に「言語」を否定したにもかかわらず、「だが本当は、言語にたいする禅の見方には、これとは反対の積極的、肯定的な側面もあるのです。」と、前言撤回とも解釈されそうな「言語」で「急」をスタートさせます。さて、残り10ページはどのように展開していくのか…
今回の最後に、続く井筒さんの言葉を引用し、次回につなげることにしましょう。
ここまで来て、事の表面だけ見ますと、結局もとの木阿弥で、出発点の経験的世界に逆戻りしてしまったかのように思われるかもしれません。つまり、一々の物が自分の名前をもち、自分自身の存在論的本質によってはっきり他から自己を区別して存立する、例の意味的分節の世界にまた返って来たかのように。……
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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