井筒俊彦さんの『意識と本質』を読み込んでみようと思います

現在、言語的コミュニケーションの可能性・不可能性の問題は、特に異文化間の対話、すなわち文化伝統を異にする対話者の間の言語的コミュニケーションの問題として異常な先鋭度を以って起こってきております。実際、いかなる文化も他の諸文化から完全に孤立して存立し得ない現代の世界状況においては、異文化間の対話の可能性という問題に誰もが直接的、あるいは少なくとも間接的に当面しているわけでありまして、コミュニケーションのこの問題性は、現代的人間の実存そのものの問題であると言っても過言ではないと思います。……

井筒俊彦さんの『意識と本質』の4番目のカテゴリー「対話と非対話~禅問答についての一考察」の冒頭を引用しています。この内容は、1977年にイランの首都テヘランで行われた『BEYOND DIALOGUE~A ZEN Point of View』と題された英語講演を、井筒さん自らが日本語に翻訳し、刊行されたものです。
なぜ、『意識と本質』を取り上げ、コーチングを語るのか…については、前回触れています。

コーチングは「対話」によってセッションが進められます。そのゴールは「気づき」です。「気づき」とは、それまで「意識」として捉えられていない「概念(無意識)」が、「意識」に浮上し、それが「言語化」につながった、という現象です。「気づき」とは、「本質」に迫っていくプロセスです。

井筒さんは、そのことを「異文化間の対話」という巨視的なスケールに拡大し、かつ、中国発であっても、日本文化が有する「特有の繊細さ」と融合することで洗練度を高め、純化した思想(哲学)として確立した「禅」に敷衍させつつ、語るのです。

井筒さんは「対話」を巨視からミクロに分解し、深掘りを試みます。

異文化の対話とは、言語的現象としては、思想感情ないし意味の二言語的あるいは多言語的相互伝達を意味します。このようなものを「対話」と呼ぶことは、厳密にいえば「対話」という言葉の比喩的延長にほかなりません。なぜなら対話(ダイアローグ)とは元来、その最も自然的・本来的形態においては、同じ一つの言語共同体に属する二人の個人の間に行われる言葉の取りかわしを意味するからです。しかしそれよりも先に、単一言語的な対話の次元においてすら、現代言語学は少なからぬ理論的難問に逢着している事実に注目しなければなりません。

ここで井筒俊彦さんとは、どのような人物なのか…Wikipediaの冒頭「概要」を引用します。

語学の天才と称され、大部分の著作が英文で書かれていることもあり、日本国内でよりも、欧米において高く評価されている。
アラビア語、ペルシャ語、サンスクリット語、パーリ語、ロシア語、ギリシャ語などの30以上の言語を流暢に操り、日本で最初の『コーラン』の原典訳を刊行し、ギリシア哲学、ギリシャ神秘主義と言語学の研究に取り組み、イスラムスーフィズム、ヒンドゥー教の不二一元論、大乗仏教(特に禅)、および哲学道教の形而上学と哲学的知恵、後期には仏教思想・老荘思想・朱子学などを視野に収め、禅、密教、ヒンドゥー教、道教、儒教、ギリシア哲学、ユダヤ教、スコラ哲学などを横断する独自の東洋哲学の構築を試みた。

どこかで読んだ、司馬遼太郎さんが「20人分の天才が1人になったような人物」と、井筒さんを評した言葉が記憶に残っています。「近代日本が生み出した最も巨大なスケールの批評家である」とも。
井筒さんは、「実際的目的のためならば、翻訳を通じて、いくらでも異文化間の情報交換はできますし、現にその程度で十分国際的な交流は行われています」、と言います。ただ、それに続く言葉はシビアです。「翻訳されたこと」で、わかったような「気分」になることを戒めます。

ただし厳密に考えれば、この程度のコミュニケーションは本当の意識内容の伝達ではない。厳密な意味での翻訳は不可能です。翻訳は本質的に一種の間に合わせにすぎません。翻訳という仕事には必ず何か偽なるものが含まれています。……

ここから井筒さんは、具体的事例として「pain(フランス語)」「bread(英語)」「パン(日本語)」の違いを、さまざまな「ズレ」によって説明します。意味内容が正確に伝達されていないことを、わかりやすく証明してくれました。

筆者はコーチングセッションを重ねれば重ねるほど、「言葉とは何だろう…」と、考えてしまいます。しばらく「20人の天才が一人になったような井筒さん」の言葉を深く感じてみようと思います。お付き合いいただくと幸甚です。


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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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