
(中沢)
そこで話をもとに戻しますと、仏教にとって性の問題は、決して消極的に否定すべきだからびくびくしていたんじゃなくて、真理が女性形で、そこに踏み込んでいく修行だからこそのマニュアル集としての具体性がそなわっていた。そして、この女性形である真理のからだの襞に分け入っていくためのチャート(海図)が、この戒律ではないかと。
(河合)
ええ、細かい具体的な行為に具体的な処方箋が書いてある。
河合隼雄さんと中沢新一さんの対談集『仏教が好き!』の第3章「仏教と性の悩み」の3番目の見出し「一神教の戒律との比較」の最後のお二人のやりとりを引用しました。前回、中沢さんが取り上げた真言立川流について、ほんの少し紹介しました。「真言立川流」をネットに入力すると、さまざま出てくるのですが、「邪教」といったワードも登場する、その教えは「性」を正面に据える内容です。
中沢さんは、その修行内容(中沢さん曰く「それがもう辛い修行で…」)を詳しく紹介するのですが(笑)、筆者は、どうもその内容を引用することに抵抗を覚えます。中沢さんに限らず、当の本人は「真面目に」性を捉え、言葉(文字)にしたにもかかわらず、それを聞いた(読んだ)人は、本人の意図とは、まったく異なる受けとめ方をしてしまうだろう突出したテーマが「性」であり、だからこそ「世界中の文学」にとっての王道テーマとして確立しているのだと思います。「性」を語る難易度は、困難極まりない。
中沢さんの「性を直視するまじめさ」は、河合さんによって「いい塩梅」に着地していくようです。そのことを感じたやりとりを冒頭で引用しました。お二人の対話は、次の見出し「仏教の戒律はマニュアル」に移ります。キリスト教と仏教の「戒律」の違いはいかに…?
(河合)
一神教の場合の戒は、言うならば一行で済むわけです。
(中沢)
そうですね。たとえば『新約聖書』「コリント人へ第一の手紙(コリントの信徒への手紙 7章1~3節)を見ると、「男は女に触れないほうがよい。しかし、みだらな行いを避けるために、男はめいめい自分の妻を持ち、また、女はめいめい自分の夫を持ちなさい。夫は妻に、その務めを果たし、同様に妻も夫にその務めを果たしなさい」。きわめて抽象的な規定です。そこで言う「務め」って何? というところまで言わなきゃ。
(河合)
そうです、そうです。
筆者は井筒俊彦さん訳の『コーラン』も手に取っているのですが、中沢さんはアジアの宗教と捉えます。一神教という分類ではなく、アジアかヨーロッパか、という視点で眺めると、「具体的な記述」という点で、『コーラン』は仏教と似ているように感じます。生活の一挙手一投足についての「戒律」を、とにかく事細かに記述していますから。
(中沢)
仏教の戒律の場合であれば、「どう触れないほうがいいか」ということまで言おうとするでしょう。たとえば「電車の中で間違って女の人のお尻に触れちゃったのはいいのか」とか(笑)。
(河合)
いや、ほんとですよ。
中沢さんは、「コリント人への手紙はそっけない」と指摘します。河合さんは「原則をまず示す」のがキリスト教であると応えます。ただし「共通点もある」と河合さんは言葉にするのですね。「二分法から徹底的に自由なスタイル」を貫く河合さんです。
次回の対話は「性」から少し距離を置いた「日本の大乗仏教」がテーマとなります。「共通点」もユーモアで包む河合さんの話術を引用し、今回を終えることにします。
(河合)
ただ、両方共通していることはありますね。「どっちも守りにくい」ということ(笑)。
完全にそこは共通なんだ。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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