(小川)
究極の家出ですね。
(河合)
そういうことです。まさに「出家」は「家出」ですから。それでそういう時に「絆」という同じ漢字が使われているのは面白いでしょう。「絆し」を断ち切って出家するから意味があるんですけど、初めからなかったら家出は価値がないんです。今の若者たちは、その絆がなさすぎて、出家もクソもないということなんですよ。何していいかわからない。ニートなんかがそうだと僕は思いますよ。
『生きるとは、自分の物語をつくること』の12番目の見出しは「“死”への思い、“個”への執着」です。
冒頭は、1ページ目の対話をカットして、2ページ目あたりからの引用なので、何が語られているのか「?」が点滅すると思います。あえてそうしたのは、「絆」という漢字に込められた深い意味が、1ページ目で語られており、読者の皆さんと少し立ち止まって、考えてみようと思ったからです。
河合さんは、「絆」を次のように紐解きます。
(河合)
…… 考えたら、生きている時間よりも死んでからの方がよっぽど長い。ところが出家しようと思うけれども、この世の「絆し(ほだし)」でなかなか出来ない。「絆し」いうのは、今の絆(きずな)ですね。今は「親子の絆」とか「絆」はプラスのイメージになっているけれど、あの頃はむしろマイナスのものだった。この間そういうことを書いたんです。今の若者は、親子の中途半端な絆によってなかなか家出が出来ないと。昔はこの絆によって出家が出来なかった。だけど人間はやっぱりどこかで家を出ないかんわけです。出家というのは、この世の家を出るわけですから、すごいことです。
そして冒頭に引用した、小川さんの「究極の家出ですね」につながります。
今回の対話は、小川さんが、前回の『源氏物語』の流れを受けて、「一方で、『源氏』は、ほとんど失恋、出家、失恋、出家の物語です。……」と、切り出したことで、河合さんの「出家論」は登場し、思想が浮かび上がってきたわけです。「対話の妙味」を筆者は感じています。
河合さんの口調…「出家もクソもないということなんですよ」については、決して上品な言葉とはいえませんが、河合さんが訴えたい文脈をしっかり受けとめると、昔とは様相を異にする「現代という時代の懊悩」を、臨床心理学者の河合さんは伝えたかったのだ、と感じられます。
ちなみに、河合さんの言質にインスピレーションを得て、チャットGPTに次のように質問してみました。
「絆」の意味は「しばる」というニュアンスもあり、そもそもはネガティブな表現でもあった、との見解に触れたことがありますが、現代は、しばられることが少なくなったためか、むしろ「大切にしたい」という意味に変化しているように感じます。正しいですか?
回答は…
「絆」は「きずな」と読み、人々の心を結ぶつながりを表します。もともとは馬などの動物が逃げないように結びつけておく綱のことでしたが、現在では家族や友人、仲間などの結びつきを意味します。この言葉は大災害から立ち上がる際に人々の心を結ぶキーワードとしても用いられていました。
したがって、あなたが感じているように、「絆」は「大切にしたい」という意味合いを持っていることは正しいです。
「“死”への思い、“個”への執着」は、河合さんが「アメリカやヨーロッパで、僕はよく『源氏』や日本の物語の話をするんです。……」など、お二人の対話は、大きく広がっていきます。さまざま紹介したいのですが、紙幅の関係もありますので、コーチングにつながる次のやりとりを引用して、今回の解説を終えることにします。
(小川)
あまりにも「個」にばっかり執着していると、何か行き詰ってしまうんですね。
(河合)
そう。「個」というものは、実は無限な広がりを持っているのに、人間は自分の知っている範囲内で個に執着するからね。私はこういう人間やからこうだとか、あれが欲しいとか。「個」というのは、本当はそんな単純なものじゃないのに、そんなところを基にして、限定された中で合理的に考えるからろくなことがないです。前提が間違っているんですから(笑)。
(小川)
何か大きな流れの中の一部として、自分を捉えるような見方が足りないんですね。
(河合)
「個」を大きな流れの中で考える、そういうふうに「個」を見るということはものすごく大事なんじゃないですかね。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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