『＜心理療法コレクションⅡ＞カウンセリングの実際』のなかで、「プロのカウンセラーとは？」に関して、河合隼雄さんは「簡単な言い方をしますと」と前置きし、次のように語ります。
つまり、簡単な言い方をしますと、クライアントがその人に会うと、何か安定した感じがして、この人だったら何を言ってもいいんだという感じとか、少しぐらい変なことがでてきても恐くないぞという感じです。そういう安定感をカウンセラーがもっているということは非常に大切だと思います。（261ページ）
「安定した感じ」というのは、平易な表現ですが、実に味わいのある言葉ですね。
これは、ある意味母性というものにもつながってきます。つまり、われわれでも母の前であれば泣けるとか、母にこそ話せるとか、何か安定というだけでなく、温かさが入っているという感じにつながっている。非常に簡単な場合でしたら、この基本的安定感があるだけで。クライアントは治ってゆくと思います。（261ページ）
コーチングも、クライアントが何でも話せる関係をクライアントと築くことが何よりも重要です。ただ河合さんは、その上でプロのカウンセラーに必要な要件を次のように綴ります。
カウンセラーは、母性的な気持ちだけでなく、人間に関するいろんな知識をもっていければならない。この点は、理論と態度の相補性として何度も強調してきました。（中略）カウンセラーになる人は、母性的なものが大きすぎると、下手をすると知識の方がおろそかになって、基本的安定感ではなくて、クライアントを早く安心させてあげようという気持ちが強くなりすぎるわけです。そうすると、クライアントが、たとえば、「私はだめな人間だから困っています」と言うと、「いや、あなたはだめな人間ではない」と言ってみたり、あるいは、「私は生きる力がありません」と言うと、「いや、何とか生きてください。あなたはすばらしい人です」とか言ってしまう。（262ページ）
ここはカウンセリングのシーンですが、コーチングにおいても、何でも話せると感じたコーチに、クライアントが、思わず弱音を吐いてしまうことはよくあることです。さて、河合さんは、この状況をどう捉えるのでしょうか。
そうすると、これは基本的安定感ではなくて、そのとき、その場でクライアントを安心さてしまおうとすることになってあまりよくありません。というのは、あまり安心してしまうと、かえって進歩がなくなるからです。（263ページ）
前段の「安定感」のイメージから変わってきましたね。コーチングのコーチも、人に関わる専門職です。「進歩」に言及する河合さんは、カウンセラーが身につける「基本的安定感」を次の言葉で説明します。プロコーチとしても学ぶべき「基本」です。
今の不安をすぐにパッとなくしてあげるということをすると、これは、要するにお母さんがあまり子供のことをかまいすぎて、子どもが進歩をそがれてしまうのと同じになります。このような欠点におちいっているカウンセラーがあるわけです。それは、同情心とか、かわいそうにと思いすぎて失敗するわけで、私のいっているカウンセラーの基本的安定感というのはそんなものではなくて、私がわざわざ「基本的」という言葉をつけたということは、そういう現在の不安を、不安な人に不安を味わわせながらもその底の方で安定感を保っていることをいっているのです。（264ページ）
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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