河合隼雄さんの『大人の友情』の16話目のタイトルは「一人立ちの友情」です。内容は、13話～15話を振り返り、総括しています。このエッセイは、次の言葉から始まります。
既にあげた中学生の友人関係のように、それによって互いが安心し、慰めあっているとしても、結果的には現状を打開して行動することの妨げになっている。友情が成長の足枷になっているのだ。
あるいは、『ヴェニスの商人』の話からは、一心同体的友情は、人間が異性と結ばれて一人前の社会人となってゆくのを妨害する可能性がある、という警告を読み取ることもできる。このように考えると、友情のマイナスの方が意識されてきて、三島由紀夫のように、「友人を裏切るべし」（『不道徳教育講座』より）という過激な発言にもつながってくる。
この『大人の友情』は、さまざまなエピソードと、河合さんの多面的な視点が織り込まれた、珠玉のエッセイ集であることが実感されます。古今東西の小説で「友情」をモチーフにしたものは、膨大に存在しますが、あえて「大人の」と言葉を連ねたことで、河合さんの生きてこられた人生そのものが広がってくるようです。
臨床心理学者の河合さんは、「依存」と「自立」について、さまざま言及していますが、この16話は「友情」には、一見「？」を感じてしまう「一人立ち」という言葉を添えて、エッセイを彩どります。
人間として、一人立ちしているということは、孤立しているのではない。ずうっと以前は、アメリカの心理学で、依存と自立を対立的に捉え、依存が少ないほど自立していると考えるような単純なことをしていたが、1960年頃より、自立している人は、適切な依存ができてそのことをよく認識している人である、と考えるようになった。このことは、あらゆる人間関係において言えることだが、友人関係の場合もこのとおりで、互いに依存したり依存されたりしつつ、そのことの認識の深さによってその自立性も高まるだろう。
河合さんは2007年に亡くなられます。この『大人の友情』は、2005年に出版された最晩年のエッセイ集ですが、この本を取り上げる以前に、CBLコーチング情報局で解説を重ねた、ベストセラーの『こころの処方箋』（1992年刊）のなかにも、「依存と自立」に触れた河合さんのエッセイがあります。そのタイトルは、「自立は依存によって裏づけられている」でした（「何を発見すると生き方に厚みが出てくるのだろうか？」と表題を付して解説しています）。理論を超えた河合さんの思想が伝わってくるところを再掲してみます。
自立ということを依存と反対である、と単純に考え、依存をなくしてゆくことによって、自立を達成しようとするのは、間違ったやり方である。自立は十分な依存の裏打ちがあってこそ、そこから生まれてくるものである。子どもを甘やかすと、自立しなくなる、と思う人がある。確かに、子どもを甘やかすうちに、親の方がそこから離れられないと、子どもの自立を妨げることになる。このようなときは、実は親の自立ができていないので、甘えること、甘やかすことに対する免疫が十分にできていないのである。親が自立的であり、子どもに依存を許すと、子どもはそれを十分に味わった後は、勝手に自立してくれるのである。
さて、この「一人立ちの友情」は次の言葉で〆括られました。「友人関係の“微妙な”味」を語る河合さんです。
友人関係によって、人間は美しい感情の体験をすることができる。だからと言って、そこにのみ留まっていると、一人立ちの障害が起こってきたりするところに、友人関係の微妙な味があると思われる。
コーチング情報局を運営する株式会社コーチビジネス研究所では、企業を対象としたコーチング研修、ビジネスパーソンを対象としたビジネスコーチング、個人の方を対象としたライフコーチングを提供しております。その他、コーチングを学びたい方のためのコーチングスクールの運営、経営者やビジネスリーダー向けにセミナーを開催しています。興味や関心がございましたら、お気軽にご相談・お問い合わせください。
This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
Coach Business Laboratory, Inc., which operates the Coaching Information Bureau, provides coaching training for companies, business coaching for business people, and life coaching for individuals. In addition, we operate a coaching school for those who want to learn coaching and hold seminars for executives and business leaders. If you are interested or have any questions, please feel free to contact us for further information and consultation.
