『<心理療法コレクションⅡ>カウンセリングの実際』の第四章「カウンセラーの態度と理論」のなかに「二律背反」を取り上げたところがあります。河合さんがスイスのユング研究所で、ユング派の分析心理学を学んでいる際のエピソードです。
日本人のクライエントがやってきて、そのカウンセリングに取り組むのですが、それがうまくいかなくなった。それで指導を受けていたスーパーバイザーに状況を説明します。
当時の河合さんは、「うまくいかなくなったけれども、カウンセリング本来の理論だと、私のやったことは間違っていない。分析の理論にそのままのっとっている」と、そのスーパーバイザーに話します。
スーパーバイザーが、にやにやと笑って、「河合君、君の日本のたましいはどこへいきましたか」と言いました。これはなかなか面白いことを言ったものだと思います。西欧の考え方はこうだということで、私が安閑としてしまっている。カウンセリングというものはそういうものだからそれでいいと思って、私がつき放そうとしている。そういう西欧的な考え方に対して、日本人である君の日本の考え方はどこへいったのだというわけです。
こういうときの言い方が非常にうまいと私は思うのですけれど、「君もっと日本風にやれ」とは言わないし、「君は日本人だから、日本流にやらなければだめだ。なぜそういう西欧的なことを言うのだ」とも言わない。「日本のたましいはどこへいった」というのは、日本的な考え方はどうなったのかということで、別にどちらの方法がよいということではない。(中略)
あとは私が自分で悩まなければならないわけです。この二つの相反するもののなかで私が絞り出したものこそ、本当のカウンセリングの道です。(105ページ)
ユング心理学も理論として創始され、ユングを継承したさまざまな心理学者によって「分析心理学」として体系化されてきました。このユング心理学に限らず、オーソライズされたあらゆる理論体系には、それを実践する過程で、河合さんが感じるような二律背反はかならず起こるのです。河合さんの場合は、西欧と日本という対置でした。
河合さんは二律背反について次のように語っています。
人間というものはこの二律背反性のあるゆえにこそ、面白いといってもよいかもしれません。つまり、人間性のなかに必ずこういう二律背反的なダイナミズムがある。そのダイナミズムを通じてこそ、われわれは、それよりも高い次元のものをつくり出すことができるのです。(107ページ)
カウンセリングを事例に「二律背反」を解説してみました。河合さんが言うように、人間であるからこそ「二律背反」が起こります。このことはもちろんコーチングにおいても同様です。コーチングの資格を取得し、多くのクライアントに接していくなかでで、その学びは深まります。「二律背反」も、もちろん体験します。そうやってコーチとしての「自己基盤」がつくられていくのです。
コーチング情報局を運営する株式会社コーチビジネス研究所では、企業を対象としたコーチング研修、ビジネスパーソンを対象としたビジネスコーチング、個人の方を対象としたライフコーチングを提供しております。その他、コーチングを学びたい方のためのコーチングスクールの運営、経営者やビジネスリーダー向けにセミナーを開催しています。興味や関心がございましたら、お気軽にご相談・お問い合わせください。
This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
Coach Business Laboratory, Inc., which operates the Coaching Information Bureau, provides coaching training for companies, business coaching for business people, and life coaching for individuals. In addition, we operate a coaching school for those who want to learn coaching and hold seminars for executives and business leaders. If you are interested or have any questions, please feel free to contact us for further information and consultation.