エグセグティブコーチングの醍醐味は「不条理な感覚」から脱していくこと

(河合
西田幾多郎は哲学だし、山田耕作は歌で、あれも相当早くからみんなに好かれるわけでしょう。ところが、宮沢賢治の入り込んだ意識の層が、もうひとつ深い、死のすれすれというところまで。死のすれすれまで行っているから、こんな形でしか言えなくて、それをみんなが読む時には、ああ、童話かと思って読むわけだから、なかなかわからなかったんじゃないかと思っています。……

今回は、河合隼雄さんと中沢新一さんの『ブッダの夢』の第2章6番目の見出し「非情な悲しみ」を取り上げます。 
宮沢賢治は、童話作家としてレッテルが張られてしまったから(筆者の解釈です)、多くの人は賢治の「本質」から遠ざかる理解に止まった、と河合さんは指摘しています。引用は、それをかみ砕いて、中沢さんに(私たち読者にも)語っている箇所です。ここから見出しタイトルの「非情な悲しみ」はスタートします。

さて、この「非情な悲しみ」という表現ですが、違和感を覚えませんか? 「とても悲しい」と言う意味であることは想像できますが、その場合「非常なる悲しみ」が浮かびます。試しに、「非情な悲しみ」をネットでいろいろ調べてみたのです、なかなか出てきません。「非情」の代わりに「無常」「無上」「無情」というのは見つかったのですが…… つまり河合さんの「造語」のようです。

中沢さんは、「西田幾多郎が次々に身内に死なれ、何から何まで悲哀の感情に、自分はヨブだっていう感覚があったと思うんです。ただ宮沢賢治は悲哀なんていうもんじゃないんじゃないか」、と捉えます。その言葉を受けた河合さんの語りを引用します。河合さんの洞察が伝わってくるよう、ほぼ全文を引用します。

(河合)
そうですね。だからね、僕はいま思い出したわ。最近、宮沢賢治についてちょっと書かされた時に、「非情な悲しみ」と書いたんです。情ではない。で、悲しみなんです。非情って情に非ずです。(中略)
宮沢賢治は、非情の悲しみを言ってるんだけど、ちょっと浅く取ってしまった人は、センチメンタルなほうに行ってしまうし、そうでない人は、わからないという感じ。たとえば『銀河鉄道の夜』の中でもね、悲しいとかさびしいという言葉が多いです。それらは僕に言わせると、非情の悲しみが多い。それはまったくセンチメンタルとは違う。それはさっき言われたように、いわゆる母なる世界を突き抜けてますから。だから、そういう深い世界の、実際、感情と呼んでいいかわからないぐらいのものだと思います。名前をつたけら悲しみとしか言いようがないけど、それは賢治の作品にとても多いんじゃないでしょうか。

筆者は今、ご本人は粉骨砕身、企業のためを思って必死に事業に取り組んでいた事業部長が、左遷されてしまい、本人は「不条理である」と、怒りが収まらない情態のクライアントを前にしているシーンをイメージしています。実際にエグゼクティブコーチングを重ねていくと気づくのですが、クライアントの経験は千差万別であり、処方箋があらかじめ決まっているというケースは、まずもって存在しません。
「不条理な感覚」に囚われてしまっているクライアントが、その感覚から脱していくプロセス…情を突き抜けていく…を私たちプロコーチと共に作り出していく。これこそが、エグゼクティブコーチングの醍醐味だと筆者は感じています。

河合さんは、宮沢賢治を語っているのですが、その一つひとつの言葉が、エグゼクティブコーチングに生かされる感覚を筆者は抱くことができます。すべてのクライアントは、人生を通じてつくり上げてきた固有の物語があります。その物語にまずは耳を澄まし、共感し、そして受容する。
宮沢賢治の「非情な悲しみ」を想像し、それが体感を伴ってきたならば……これまでとはまた違った物語が生まれてくるような気がしています。


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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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