
(中沢)
きょうはそこで仏教と長生きの話をしようと思います。梅原猛先生などよく「イエスの教えは青年の思想だ。あれは三十代の思想家だ」とおっしゃいます。三十代の初めに残念ながら殺されてしまった。ところがブッダは八十歳まで生きて、ムハンマドは六十まで生きた。長生きなのですねえ。それにブッダの思想は、いま書かれているどの「ブッダ伝」を見てみても、その長い人生を通して思想が成長したようには書かれていません。すっかり完成した思想をいろいろな対機説法のやり方で相手の程度に合わせて語っていたというのですね。……
河合隼雄さんと中沢新一さんの対談集『仏教が好き!』第2章「ブッダと長生き」の2番目の見出し「イエスは若い思想、ブッダ、ムハンマドは老人の思想」を、取り上げます。引用は、その書き出しです。対機説法は、表意文字としての漢字のイメージから、何となく理解できますが、一応調べてみました。
対機説法(たいきせっぽう)とは、仏教用語で、相手の能力や状況に合わせて教えを説くことを意味します。相手の理解度や関心、抱えている問題などを考慮し、最も適切な形で仏の教えを伝えることを指します。これは、まるで病気の種類や程度に合わせて薬を処方するように、相手に合った教えを説くことから「応病与薬(おうびょうよやく)」とも言われます。 (Search Labs | AI による概要)
ブッダの「相手の程度に合わせて語っていた」ことがしっかりと伝わってきます。ある教育学者が、「教育の目的を達成するうえで、小学校の先生が最も難易度が高い」と言葉にしていたことを想い出します。「なるほど…」です。
これまでこの「コーチング大百科」で、河合さんのことをさまざま取り上げてきていますが、その理由については、筆者としてしっかりと言語化できます。ただし、「対機説法」という言葉を認知していなかったこともあり、河合さんとブッダの「対話のスタイル」について、つながりを意識して考えたことはなかったのですね。それが、この見出しで語られる「中沢さんのブッダ」を深く読み込むと、仏教を深く愛する心理療法家の河合さんは、まさに「対機カウンセリング」をやっていることが、しっかりと理解できるのです。
7月11日に<「相手と同じ目線の言語」に変幻自在にチューニングできる人を目指したい>というタイトルで「あるがままの河合さん」を描いてみました。「Being」です。再掲します。
河合さんは、さまざまな分野における「あまたの斯界の専門家」と対談されています。一方で、臨床の現場では、高校生や、特に学問を修めていない高齢者など、俗にいうところの庶民とも数多くのカウンセリング対話を重ねています。その多くを読み込んだことで、筆者は「気づき」を得ています。驚きを伴う「気づき」でした。
「どのような対象者であろうとも深い意志疎通が両者の間に形成されている!」(中略)
「能ある鷹は爪を隠す」という諺がありますが、「隠す」とあるように、そう評価される人に共通する捉え方として、「意図的にそのように振る舞っている」という含意が感じられます。河合さんの場合は、まったく違うのですね。そのような「意識」は存在していません。すべての人に対して自然体です。ご本人が意図することなく、変幻自在に「そのようになっている」のです。「Doing」ではなく「Being」です。
さらに共通項はというと、「矛盾の包摂」に見出せます。去年の4月19日に、<矛盾したものを持たないといかん!>というタイトルで、河合さんの「矛盾論」を紹介しました。
「ブッダの矛盾」については、中沢さんの分析が冴えわたります。3ページに及ぶ壮大な語りですが、「ブッダの思想にはもともと矛盾なんかなく、教え方にも矛盾はなく、パーリ語の原典に記録されているものが、そういう矛盾のないブッダの真説」…これが、近代日本仏教学の基本であると指摘した後、次のように「ブッダの矛盾論」が展開されます。その肝を引用し、次回につなげることにしましょう。
ところがチベットの仏教の考え方はそういう考えを否定しちゃいます。「いや、そうではない。ブッダの思想に最初から全部あったんだ」。この矛盾した教え方の方の全部が、ブッダの考えだって言うんです。小乗のほうは「出家しろ」と言い、密教では「セックスしろ」と。こんな矛盾したことがどうしてブッダの教えとしてあるのか。
チベットの先生たちは、教えを説く最初から、この人は密教を教えていいという人にはエゾテリック(秘教的)な教えを説いていた。社会運動に関心のある人には大乗のような考え方を、ちょっと生活をフォーマルにして生きていきたいという人には小乗仏教を語っていたんであって、ヨーロッパ人の学者たちが言うみたいに、外的影響で歴史的に積み重なって展開してきたために、仏教は全体として見ると矛盾だらけになってしまったのではなく、この矛盾したものの全体がそのまま仏教だと考えるのです。矛盾を排除するんじゃなくて、どう折り合いをつけるかという、ある意味で大人の理解を示すんです。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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