
(中沢)
しかしそれもワーグナーを頂点として、旧大陸では解体現象をおこし始めます。そして、新大陸へ渡ったプロテスタント原理は、巨大な帝国としての別の発達を遂げるようになった。何かの補償作用がおこっています。それがアメリカをつくっています。だからいまイスラムの原理的な人びとと、プロテスタントを核として発達したアメリカという国家がこういうかたちで激突していることには、何かとても意味深長なものを感じるのです。
河合隼雄さんと中沢新一さんの対談集『仏教が好き!』の第1章「仏教への帰還」の9番目の見出し「鏡をはさんで見るプロテスタントとイスラム教」で展開される対話を取り上げる3回目です。前回、ワーグナーが対話に登場したので、その後半は「ワーグナーを深掘りする」内容となりました。ワーグナーファンでもある筆者の「蘊蓄語り」になってしまったので、少々反省しています。
さて、ここでの見出しタイトルは、「鏡をはさんで見る…」とあるのですが、お二人の口からは、まだ「鏡」が現れていません。 冒頭の引用の続きです。
(中沢)
ある点で似た者同士というのか。思想のかたち、ものの考え方が本当によく似ているところがあります。だけど、鏡の像のように、全部おたがいに反対を向いています。鏡の像のように全部が反対になる理由は、イスラムはアジアの宗教だから、プロテスタントはヨーロッパの宗教だからでしょう。
(河合)
まさにヨーロッパやねえ。キリストはもともとそうでもなかったんだけど。
「似た者同士、でも反対を向いている…」。近しいからこそ反発する。「あるある」が伝わってきます。中沢さんはそのことを、「水と油」と思われているキリスト教(プロテスタントですが)とイスラム教に見出している。とても大きなスケールで「俯瞰」している。中沢さんの「俯瞰の力」をこうして、目の当たりにすると、「本当に俯瞰する」には、「森羅万象を受けとめる」というプロセスを経ないと、体験できない世界であることを痛感させられます。
中沢新一さんを紹介するWikipedia(かなりのボリュームです)を読み込むと、「これはゲーテ、フンボルト、フロイト、ユング、そして日本での柳田國男、折口信夫、吉本隆明などと同じく、名前を冠した『中沢学』という、世界を丸ごと理解しようとする試み」、との記述に出会います。感動的な言葉ですね。
「世界を丸ごと理解しようとする試み」は、コーチングが掲げる高邁な目的そのものであることに気づかされます。リベラルアーツを究めていくと顕現する世界観であると、筆者は「俯瞰」しています。
『仏教が好き!』は、時と場所を変えて6回ほど行われた対談が収録されています。その第1回(第1章)は、この「鏡をはさんで見るプロテスタントとイスラム教」で終わります。その最終の語り合いを引用(上記の続き)して、第2章につなげることにしましょう。
(中沢)
だから二つは大変よく似ているところがある。歴史の皮肉ですね。まったく同じなのに、全部が反対を向いているというのが、愛と憎しみが発生するいちばんの原型でしょう。愛も憎しみもここから生まれます。「この人を大好きだ、自分とそっくりだから」。「だけれども大嫌いだ。全部自分と反対だからだ」。これがいまアメリカとイスラムの間におこっている。別に異質だからといって文明が衝突しているわけじゃないんです。
(河合)
いや、本当に面白かった。
(中沢)
ようやく「仏教とは何か」ということを考える出発点に辿りつきました。
(2001年10月19日)
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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