
(中沢)
神がイエスを見捨てたから、イエスは殺された。ところがそれで、人間は負債を背負うことになった。ところが、この時神がイエスをSFXばりのやり方で救ったりしたら、人間はべつに、負債を負うこともなくて、宗教も生まれなかったでしょう。日本人の宗教といちばん大きな差異はここですね。
(河合)
それから、要するに日本人は原罪ということはわかりにくい。しかし、僕は日本人にしては、わりあいに西洋人に近いところがあります。
(中沢)
それは先生が悪人だからではないでしょうか。
前回より、河合隼雄さんと中沢新一さんの対談、『ブッダの夢』第5章「善悪を超える倫理」の最後の見出し「臨床の現場で問われる倫理」を取り上げています。5章の最後であるこの見出しは、章全体を総括する内容です。ボリュームも8ページと他の見出しと比べて、長さだけでなく濃密な対話が交わされます。
河合さんは自分のことを「西洋人に近いところがあります」と言葉にするや否や、中沢さんは「先生は悪人だから…」と、すぐさま反応しています。
ここだけを切り取ると、「中沢さんは失礼だな…」と感じてしまいますね。では、この言葉を受けて河合さんは何と応えるのか…
(河合)
きっと、自分が悪人だという意識が、小さい時からずっとあるからでしょう。何かを決断する時には倫理でやっていない。
(中沢)
違うところに根拠はあるということ知っているからでしょう。
河合さんは「ううん…?」と感じることなく、自然に対話が進んでいきます。なぜかというと、4つ前の見出し「西洋の学問はどこからうまれたか」の中で、河合さんが、「私を含めて河合家のメンバーは悪人である」ことを、中沢さんに自己開示しているからなんですね。その「悪人」が、最初に河合さんの口から飛び出した際、中沢さんは少し忖度するような言葉を返すのですが、その「悪人観」について、河合さんの深い洞察が伝わってきたことで、中沢さんは全面的に「河合さん=悪」であることを受けとめるのです。
河合さんと中沢さんという、「世界をまるごと捉える」両雄の語り合いだからこそ、実現した対話であると、筆者は感動しています。
続きの対話を引用します。
(河合)
たとえば多神教というような言い方するとすれば、僕の場合だったら、僕の根拠に一人の神がいる。だからその神さんが右と言うから行くと。ただし、一神教じゃないですから。そうすると、僕の神さんと中沢さんの神さんが違う時があるわけ。
(中沢)
そうですね。狸と狐。
(河合)
そう。それをどうするかという問題がひとつあるんです。
(中沢)
お互いに神様同士で話し合う。
(河合)
僕はね、そう思っているんです。だから、僕の方が正しい、あなたは間違っているとは決して言わない。ただし、僕の神さんはこう言っていると。あなたの神さんはそうかと。……
今回の解説は、ここに止めようと思います。河合さんの続きである「……」から、次回紹介しようと思います。コーチングは「対話」です。それは決して「予定調和」ではない。コーチとクライアントが、それぞれの「想い」を込めて、真剣に言葉を紡ぎ出す。この流れが生まれた時、双方に深い「洞察」が訪れます。コーチングは実に深い世界ですよね。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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