フロイトが創始した「精神分析」は、その後に続く心理学者に大きな影響を与え、その解釈を拡大したり、一方で批判したりする形で、臨床心理学、心理療法の広がりと成熟に貢献してきました。
「コーチング、カウンセリング、コンサルティングの違い」では、比較表の「方法」で、その心理療法を例示しています。
神経科医であったフロイトは、ヒステリー患者の治療を通してあることに気づきます。「ヒステリーは無意識や抑圧に起因するもので、そのことを患者自身が自覚することで症状は軽快に向かっていく」。そして無意識や抑圧がどう形成されるのか、については「幼少期の体験」を重視したのです。
トラウマ、PTSD（心的外傷後ストレス障害）という用語は、今日広く認知されています。いずれもフロイトが提唱した理論を背景としています。
フロイトが提唱した理論はさまざま存在するのですが、コーチングとかかわりの深い「構造論」を解説してみましょう。
フロイトがこの考えを発表するまでは、心というあいまいな対象を知的に理解する捉え方が世に存在していませんでした。その心をフロイトは、エス（イド）、超自我（スーパーエゴ）、自我（エゴ）の3つの層構造でアプローチします。
エスはドイツ語で「it」のそれ（イドはラテン語）、という意味です。快楽原則に基づく本能衝動、欲望そのものと捉えます。超自我は「〇〇しなければならない」というように、両親のしつけやルール、道徳や倫理によって、エスを抑えこもうとする機能です。では自我は何かというと、現実原則により両者のバランスをとろうとする働きです。ただ自我の力が弱い場合、言い換れば、エスが強すぎたり、あるいは超自我による支配が強固になると、社会との適応に問題が生じるとフロイトは考えました。
コーチングは、クライアント本人が自覚していない気づきを、コーチとの会話を通じて獲得していく流れです。フロイトの「構造論」は、クライアントがそのとき置かれている状況を推測する手がかりとして活用できるかもしれませんね。
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