猟師と熊の両方の側に立って宮沢賢治は『なめとこ山の熊』を書いた

(中沢)
実際に動物を殺して食べなきゃならないということを賢治はそんなに否定していないんですよね。猟師の人生に共感を持って……。
(河合)
『なめとこ山の熊』とか。
(中略)
(河合)
それも頭から、なぜ熊を殺すのかっていう態度でヴェジタリアンがものを言うとね、熊を殺す人間に感情移入はできないんだけど、宮沢賢治は、熊を殺す人間の立場に深く入って、しかも熊の側からも見ているし、両方から見ているでしょう。

河合隼雄さんと中沢新一さんの『ブッダの夢』の第2章は、8つの見出しで構成されています。今回も、その最初の見出しである「『ビヂテリアン大祭』の衝撃」を取り上げます。
この見出しは3ページ半という短い構成であり、次の見出しである「『毒もみの好きな署長さん』の悪」に移るのですが、宮沢賢治の「どこまでも寛容な姿」を、この『ビヂテリアン大祭』に見出すことができるので、こうしてコーチングの解説を続けています。

さて、冒頭の引用なのですが、『ビヂテリアン大祭』『なめとこ山の熊』に共通点があることを河合さんが語っているところです。筆者は『なめとこ山の熊』を新潮文庫の『注文の多い料理店』で読んでいます。同書は、表題の『注文の多い料理店』をはじめとする19の作品が収められ、その最後が15ページの同作品です。80ページの『ビヂテリアン大祭』と異なり、とても読みやすい宮沢作品そのものの掌品ですね。ただし…やはり深いのです。半ばあたりに、猟師の小十郎と熊が会話をするシーンがあります。

小十郎は油断なく銃を構えて打つばかりにして近寄って行ったら熊は両手をあげて叫んだ。
「おまえは何が欲しくて俺を殺すんだ。」
「ああ、おれはお前の毛皮と、肝(きも)のほかにはなんにもいらない。それも町へ持って行ってひどく高く売れるというのではないしほんとうに気の毒だけれどもやっぱり仕方ない。けれどもお前に今ごろそんなことを云われるともうおれなどは何か栗か、しだのみでも食っていてそれで死ぬならおれも死んでいいような気がするよ。」
「もう二年ばかり待って呉れ、おれも死ぬのはもうかまわないようなもんだけれども少し残した仕事もあるしただ二年だけ待ってくれ。二年目にはおれもおまえの家の前でちゃんと死んでやるから。毛皮も胃袋もやってしまうから。」
小十郎は変な気がしてじっと考えて立ってしまいました。熊はそのままひまに足うらを全体地面につけてごくゆっくりと歩きだした。小十郎はやっぱりぼんやり立っていた。

小十郎と熊の両方に、童話を書いている賢治のそのときの気持ちがのり移っているような気がしますね。小十郎は丁度2年目の朝に、赤黒いものが横になっているのを発見します。

小十郎はどきっとしてしまいました。そばに寄って見ましたらちゃんとあのこの前の熊が口からいっぱいに血を吐いて倒れていた。小十郎は思わず拝むようにした。

小十郎は最後に熊に殺されるのですが、「おお小十郎お前を殺すつもりはなかった」という熊のことばを聞きます。

もうおれは死んだと思った。そしてちらちらちらちら青い星のような光がそこらいちめんに見えた。
「これが死んだしるしだ。死ぬときに見る火だ。熊ども、ゆるせよ。」と小十郎は思った。それからあとの小十郎の心持はもう私にはわからない。

今回はコーチングの解説になったかどうか「?」ですが、文庫に収められた『なめとこ山の熊』の最後4行を引用して、終えることにします。宮沢賢治の精神性が詩的な言の葉となって浮かび上がっているようですね。

思いなしかその死んで凍えてしまった小十郎の顔はまるで生きているときのように冴え冴えして何か笑っているようにさえ見えたのだ。ほんとうにそれらの大きな黒いものは参の星が天のまん中に来てももっと西へ傾いてもじっと化石したようにうごかなかった。


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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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