人と人の間の「距離感」は「一筋縄ではいかない」

その問題を考えるとき、ケアはケアを必要としているひとに何かをしてあげることだという思い込みから、まずは自由になる必要があるだろう。
さて、沈黙が饒舌よりはるかに物を言うことがあるように、何もしないことが献身的な行為よりも多くをなしとげるということがある。いや何もしないというより、してはいけないことが、結果としてはよいことをなしとげるということすらある。そしてこれが、現実というもののおもしろいところ、一筋縄ではいかないところだ。

実に「一筋縄ではいかない」テーマを鷲田さんは提示してくれました。
ここでの「献身的行為」は、病院というケアの場についての論考なのですが、家族における「親が子どもに対して、“一生けんめい”に働きかける関係」にも敷衍させることが可能です。
家族心理学」について解説した弊社コラムの一節を引用してみましょう。

家族心理学の重要概念をもう一つ解説します。それは「フィードバック」です。フィードバックとは「結果に含まれる情報を原因に反映させ調整を図る」ことですが、家族の機能不全にこの視点を適用すると「IPに対してよかれと思って一生懸命働きかけているその行為自体が、問題現象の原因になっている可能性がある」と推測することになります。過干渉や甘やかし、共依存などの存在です。

冒頭の引用は、『臨床とことば』の第4章、3番目の見出し「関心ということ」の書き出しです。鷲田さんは、ご自身の入院時に目撃した情景に「気づき」を得ます。その情景は、第3章の河合さんとの対話で語られます。一人語りのこの「関心ということ」で、改めてその「気づき」を紐解きます。 

河合隼雄氏との対談のなかでもふれたことだが、十数年前、腹部の手術のために入院したことがあった。(中略)
そのおじいさんは、病室ではそれまで、何から何までナースに「してもらう」生活だった。他人のために何かをするという生活からは、たぶんほど遠い生活だった。それがだれかのためにじぶんにできることを、その覚束ない意識のなかでそれでも見つけた。

「自分のためにがんばります!」との言葉を耳にすることがありますが、本当にがんばれるのは「他者のために自分が役に立っている」、という実感を得られたときです。この「真実」を鷲田さんは次のように言語化してくれました。

これは大きなことである。じぶんの存在というものが他人のなかで何のポジティブな意味をもっていないということを思い知らされるのは、何歳になっても辛いことである。じぶんはいてもいなくてもどっちでもいい存在ということを思い知らされるのは、家庭でも、学校でも、職場でも。このおじいさんは、この子はじぶんがいないとだめになると、朧げな意識のなかで感じたにちがいない。そのことがこのひとの顔をいきいきとさせた。
生きる力というものは、じぶんの存在が他人のなかで意味があると感じるところから生まれる。

「関係」とは、人と人の間の「距離感」のことです。筆者は「一筋縄ではいかない」と、このテーマを捉えています。ともすれば「共感疲労」にも陥ります。私たちコーチは、クライアントとの「距離感」をプロフェッショナルとして「自在にとれるようになる」ことを目指します。
今回のコーチング解説の最後に、5月13日にアップした『臨床とことば』の第1章、4番目の見出し「さまざまな距離」の中にある河合さんの言葉を引用し、終えることにします。

ほんの少しの言い方、態度で二人の距離は近くなったり遠くなったりする。そして、常に一定の距離を保つのがよい、などということもなく、遠くなったり近くなったりしつつ、進んでゆくのだが、治療者はその「距離」を相当に意識していないといけないし、必要に応じて変えることも大切である。


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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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