55のエッセイを集めた『こころの処方箋』の55番目のタイトルは「すべての人が創造性をもっている」です。この最後のエッセイは、「コーチングの哲学」をも感じとることができる珠玉のエッセイです。
「心理療法の仕事をしているために、実に沢山の人々にお会いしてきた…」と、はじまり、1ページ目の半ばあたりで、「このような経験のなかから言えることのひとつに、“すべての人が創造性をもっている”というのがある」と、河合さんの思いが綴られます。
そんな馬鹿なことはない、創造的な人はごく少数の選ばれた人だ、という考えの人もあるだろう。確かに、モーツァルトのような人があちこちに沢山居るなどということはないだろう。しかし、よかれあしかれ多くの人に影響を及ぼすような創造性でなくとも、これこそ唯一の新しいものだ、というものを創造するということは、すべての人にとって可能であると思う。
臨床心理学者（カウンセラー）である河合さんのもとには、何らかの精神的な不調や、多くの人が適応していると感じられる環境に、違和感を覚えてしまう人が、クライアントとなって訪れます。河合さんはその人たちのことを、「別に私がすすめたわけではないのに、絵を描いたり、小説、詩、和歌、俳句などをつくったり、音楽をしたり、いろいろな芸術的なことをされるようになった方が多い」と、自然体で語ります。何だか「納得」できますね。
河合さんのクライアントへの眼差しは、とても温かい…
自分の「創造の種子」が、その人の属する集団、つまり、家庭、地域、社会、国家などの傾向と異なる場合は、なかなか困難が大きい。生きてゆくためには、その人は一応は集団に適応しなくてはならない。時には、自分の「創造の種子」を強く圧迫することによって、それを成し遂げ、本人もそれでよいと思っているときさえある。そのようなときに、その人は神経症の症状をはじめ、いろいろな「困難」や「苦悩」に出会って、われわれのところに相談に来られる。
その人たちに対して、河合さんは「創造の種子」が発芽し、伸びてゆくのを援助します。その過程で、その人なりの「創造の作品」が、できあがっていきます。河合さんは、そのプロセスを…
ここで言う「作品」とは、その人の人生そのものなのである。このように方向を見出し、自らの力で創造活動を続けられるということになったとき、その人とわれわれは別れることになるが、それまでは数年、あるいは、十年を越える年月を要するときもある。
ここでの河合さんは、カウンセリングを語っていますが、多くの人にとっても、人生を歩むということは、戦ったり、妥協したり、方向転換をしてみたり、いろいろなことが生じるなかで、挫折や失敗を経験し、それが「糧」となって、成長、成熟していく長いプロセスということですよね。
この55番目のエッセイは、9つの段落で構成されています。河合隼雄さんの『こころの処方箋』にインスパイアを得て、コーチングを語ってまいりました。そのフィナーレを飾るべく、最後のパラグラフ（9番目の段落）を紹介させていただこうと思います。
この経過のなかですでに述べたように、芸術作品を生み出してゆき、それが一般的にも評価されるようなものになるときもある。しかし、私が大切にしているのは、そのようなことも含めて、その人の生き方全体の創造であり、「“私が”生きた」と言えるような人生をつくり出すことなのである。創造には犠牲がつきもので、そこには何らかの犠牲が生じるだろう。そのことも明確に意識し、そのような犠牲の責任者としての自覚をもって、「私が生きた」と言えることが必要である。「“私が”生きた」という実感をもったとき、それはいつ誰によっても奪われることのないものであることが明らかで、「創造」の実感も伴うはずである。それが、明確なものになればなるほど一般的な社会的評価はそれほど気にならなくなるし、それはもっともっと普遍的な存在の一部としての責任を果たしたという自己評価につながっていくだろう。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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