河合隼雄さんのエッセイ集である『こころの処方箋』の31番目のタイトルは、「ソウル・メーキングもやってみませんか」です。
今回は、「この原稿を書いているのがお盆だから。というわけでもないが、今回はたましい（ソウル）のことを書いてみよう」とはじまる、このエッセイを取り上げます。
「ソウル・メーキング」の意味をチャットGPTに質問すると、「魂の形成や魂の成長を目指すことです。ソウル・メーキングには、さまざまな方法や手法がありますが、一般的には、以下のようなものが挙げられます」と、3つの方法が紹介されていました。
さて、河合さんもそのあたりの解説を進めていくのかな？ と思いつつ、読み進めていくと、そうではなく、「滋味あふれる」メタファーとしての「たましい」が伝わってくる内容でした。
河合さんは2ページにわたって、日本の中世の説話でよく取り上げられる「冥界往還」を紹介します。ある人が死んで、あちらの世界を体験しながら、結局、その人はもう一度この世に返される、という内容です。
この話によると、こちらの世界の行為に応じて、あちらの世界で住む家が作られていくわけだが、その住居に住む期間を考えると、こちらの住居などほんの僅かで、あちらに住む方が途方もなく長いので、あちらの住居の方がよほど大切なことは誰でもわかるだろう。とすると、こちらで豪邸を建てると、あちらはそれに対応してどんな住居が出来上がるのだろう。人を陥れては金を貯め、豪邸を建てている間に、あちらでは「たて穴式住居」が深く深く掘られてゆく、など考えてみると面白い。
河合さんはこの話にインスピレーションを得ます。
自分が死んだときにあちらに持ってゆけるものが、自分のたましいであると考えてみてはどうであろう。財産をつくっても、もちろん持ってゆけない。本を沢山書いたというので棺桶に入れて貰っても、あちらに行くまでに焼かれるくらいがおちである。自分の体だって焼かれるか腐るかである。私は背骨を正しく伸ばして生きてきた、と威張ってみても、骨も砕かれて壺に入れられてしまう。
河合さんはユーモアを交えながら「現実そのもの」を語ります。この語り口に身を預けると「本当にそうだよなぁ～」と、何かが「ストン」と心に落ちてくるようです。
閻魔さんの前に持っていって、これが私のたましいですと示せるもの。そのようなたましいを生きている間にいかにしてつくるか、これがソウル・メーキングである。
河合さんは「怠け者とか無気力とか言って非難されている人のなかには、そのような人もいるのではないか」と言います。
いや、本当はソウル・メーキングにひたすら励んでいるのだが、われわれ凡人にはそれが見えないのかもしれない。こんなことを思い始めると、怠け者ということで、同僚や家族からうとましく思われている人に、急に尊敬心が湧いてきたりするから面白いものである。もちろん、この逆もあって、多くの人から尊敬されている人でも、ソウル・メーキングでは借金だらけなんて人もいるかもしれないのである。
河合さんは、“偉い人”にありがちの「教訓を垂れる」ことはしません。河合さんの根底には「人とはわからないものだ」という思いが確固として息づいていますから。
河合さんは今回も、私たちに爽やかな「脱力」を与えてくれました。
じゃあどうすればいいのかと訊かれそうだが、そもそもたましいなんてものが、あるのかないのかわからないし、どちらかと言えば、ないと思う方が常識じゃないか、というのだから、何とも答えようがない。筆者も、たましいはあるなどと主張しているわけでもなく、それがあると考えて、たまにソウル・メーキングをやってみたり、それについて考えてみたりするのも悪くないのじゃないかな、と提案しているのである。
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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