黒船の来航によって眠りを覚まされた日本は、主体的というより日本内部の圧搾空気が破裂するように開国を選び、そして明治維新となります。西洋社会との「文明」の遅れを痛感した日本は、以降懸命に「西洋科学」の輸入に邁進し、内部化に努め、西洋モデルとの統合を希求して走り続けます。
辺境の島国という地政学的な幸運にも恵まれ、明快な武力による侵略もなく、国家レベルでの「実感できる痛み」を経験していない日本は、アジア太平洋戦争に突入します。その結果、沖縄での悲惨な地上戦に至り、世界で初めて原爆を落とされます。それまでつくり上げてきた価値観が崩れ去るのを国民が体験するのです。
CBLコーチング情報局は、これまで多くの臨床心理学者を取り上げてきました。心理学そのものは西洋発の学問ですから、フロイト、ユング、アドラーなど、海外の心理療法家がどうしても中心となります。コーチングも米国で生まれ、その流れで体系化が進められているので、現在「コーチング」として日本に広まっている概念も、米国流がベースにあります。
さて、今回の解説は大きな話から始めていますが、数多くの海外の臨床家の解説を積み重ねた後、CBLコーチング情報局では、アンソロジーとして発刊された6冊の『＜心理療法＞コレクション』を中心に、河合隼雄さんの思想について、紹介を始めています。
河合さんは、ユング、そして西洋社会・文化を極めようと研究に心血を注ぐ過程で、西洋と日本の違いが相対化されていくのを実感します。その結果、西洋は「中心統合型」であり、日本は「中空均衡型」である、という一つの思想を打ち立てます。
コーチングそのものは新しい概念です。ですから、日本に輸入され広がってきたものの、現状は日本文化にまだうまく取り込めきれていない揺籃期にあるのではないでしょうか。
CBLコーチング情報局で河合隼雄さんを多く取り上げているのは、西洋と日本の文化の違いにとどまることなく、俯瞰した視点で「異質の統合」に挑戦し、その生涯を通して、われわれが共有できる「一つの解答」を提示してくれたことに着目しているからです。
「コーチング」… この“言葉”の認知は広がっています。ただし、繰り返しますが、「その本質の素晴らしさ」に思い至らず、いまだ「なじんでいない」ことが実感されます。この日本では…
CBLコーチング情報局は、この課題を受けとめます。「コーチング」が日本に浸透し、広がっていく未来のビジョンを描き、今後もコーチングを語ってまいります。
昨年の8月30日に第1回のキーワード解説をスタートして以来、300回目となった今回は、ここまでを振り返る内容になりました。最後に、『＜心理療法コレクションⅠ＞ユング心理学入門』の一節を引用することにします。ユング派心理学の泰斗である河合さんだからこそ、伝わってくる思想です。
なお、日本で、ユングの考えをそのまま適用できるか否かにも疑問が残る。これは、西洋において、意識の態度（自我）が非常に重視されるのに対し、東洋では、意識のみならず、心を全体として捉える態度が強く、むしろ、未分化な全体性を尊ぶ傾向が強かったので、ユングのいうような一つの心理機能の発達ということが存在しがたいと考えられるからである。
一つの機能を発展されるよりは、たとえ未分化でも全体としてのまとまりを追う傾向や、特異なもの（主機能）を伸ばす楽しみよりは、不得意なものに注目して「苦行」しようとする生活態度に結びついて、際立った型を見出しがたくしているようにも思われる。
筆者の帰国以来のわずか二年の経験では、外人の場合ほど、はっきりとはしていないが、やはり相当役立つ場合も存在しているようである。今後、この点に注意しながら、心理療法の経験を重ね、もっとはっきりした結論を得たいと思っている。（35ページ）
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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