河合隼雄さんは『<心理療法コレクションⅢ>生と死の接点』の中で、「分裂」という見出しを設けて、論を展開します。
境界例の人と接していると、心の分裂という方法によって自分を守っていることによく気づかされる。たとえば、はじめにあげた例によって説明してみよう。ある大学の先生にほれこんで大学院で勉強したい、と言うときは、何が何でもそこに行きたいし、行くための努力はする、と何度も何度も主張しておきながら、試験に落ちて、あんなところなど行くべきではなかった、行くのを同意した治療者が悪いと攻撃するときは、以前に言ったことは完全に無視、あるいは忘却されてしまっているのである。つまり、個人のある時の行為や主張とまったく反対のことが急に現れてきて、その間が分裂してしまっているのである。(227ページ)
河合さんは、「境界例の人」のこの状況を、「統合」という人間にとって極めて大切な方法がうまく使えないので、「分裂」によって切り抜ける(といっても成功するわけではないが)ことになるのではなかろうか… と捉えます。
ここから、河合さんは、「分裂」について、西洋近代科学というスケールの大きな世界に視野を拡大し、論じます。
西洋近代科学のパラダイムはあまりにも現実を支配するのに好都合なので、神の存在を忘れたり、おびやかしたりするほどになった。そして、それが頂点に達したかの如く思われた最近になって、近代科学に対する反省や、その矛盾を指摘するような事実が生じてきた。先に述べたように境界領域に挑もうとする人が、「分裂」によって自分を守るのに対して、古い科学を守ろうとする人は「拒否」によって身を守ろうとするように思われる。(230ページ)
河合さんは明快です。「分裂」つまり「二者択一」ではなく、「人間はそもそも多くの矛盾を抱えているわけで、それらに悩み、考えてゆくことは分裂ではない」というのが、河合さんの思想ですから。
CBLコーチング情報局では、エグゼクティブコーチングについて、多くのキーワードを挙げて解説しています。企業の経営層にとっての日常は「葛藤」そのものであり、次々と到来する「矛盾」に対して、逃げることなく(「分裂」ではなく)、そのことを受容し、「異質の調和」に向かって、頭をフル回転させていくことなのです。
エグゼクティブコーチは、その経営者に寄り添います。共に悩みながら、解を見出していくのです。
河合さんの〆のメッセージは次の言葉です。私たちコーチも、決して「知者」とはならないよう、二者択一とは異なる「境界領域は存在する」ことを肝に銘じたいと思います。
「知者は知ろうとしない」という言葉がフランスにあるそうだが、いったん「知者」としての地位を得ると、それ以上に新しい事実が出てくれば自分の地位が危うくなる可能性があるので、新しいことなど知ろうとしないのである。なるべく新しい事実を拒否しようとするのが、既成の科学者であったりするのもこのためである。このような人は境界領域の存在をなかなか認めようとしない。(231ページ)
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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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