『<心理療法コレクションⅥ>心理療法入門』は、河合隼雄さんの晩年の著作、講演をチョイスしたアンソロジーです。今回のキーワード解説は、その「第8章 個人と社会」の中の「イエの崩壊」を取り上げることにしましょう。冒頭で河合さんは、社会学的アプローチにより、日本の「イエ」の変遷を紐解きます。
明治維新になっても、「イエ」の概念は変わらなかった。ところが、第二次世界大戦の敗戦後、アメリカ占領軍は日本の封建制を破るために、日本の「イエ」制度を廃止してしまった。日本人は以前よりもはるかに「自由」になった。ところが、「イエ」を失っては、アイデンティティがなくなるおそれがある。そこで、日本人はあまり意識していなかったもわからないが、「代理イエ」をつくった。そして、いずれかの「代理イエ」に所属することによって、そのアイデンティティの支えにした。日本人にとっては、どこに「所属」しているかが非常に大切なことになった。どのような能力や個性を持つかということの前に、「所属」が問われるのである。(205ページ)
CBLコーチング情報局のキーワード解説で、「所属と居場所」の重要性を説いています。河合さんはご自身が、当時唯一の日本人としてスイスのユング研究所で“鍛えられた”経験を踏まえ、西洋文化と日本(東洋)文化の違いを「実感」として相対化させています。少し踏み込むならば、「相対化させることに成功した」との表現できるかもしれません。
西洋のキリスト教文化圏においては、個人は神と一対一の契約を結びます。そのことを「信仰」として受容する彼らは「個人主義」がその基盤ですから、「所属」に対する概念も日本とは異なっていることが自明です。
「イエ」制度の廃止によって生み出された「代理イエ」の代表が「カイシャ」であることは、説明するまでもないですね。高度経済成長とは、それが「社会システム」と化してもたらされた産物です。その背後には「核家族化」への急速な、そして不可逆的な進行がありました。
つまり、「イエ」のなかにおいては、イエ集団として行っていた育児の仕事がすべて、若い夫婦に担わされることになった。最近よく論じられる父親の役割、母親の役割などということは、「イエ」内のいろいろなメンバー、祖父母など、それに加えて「イエ」をとりまく「村落」の人間関係によっても機能していた。これらがすべて取り除かれ、若い夫婦に育児の責任がかかる上に、父はむしろ家庭の外の「代理イエ」にアイデンティティを求めるとすると、育児の責任は母親にかかってくる。そこで、母親が子どもの成長に生き甲斐を感じるのは当然である。ひところ「教育ママ」という言葉が、母親を非難する言葉として流行したが、教育ママを生み出したのは日本全体である。(206ページ)
次回は、河合さんが指摘する「新しい家族関係」を取り上げることにします。
コーチング情報局を運営する株式会社コーチビジネス研究所では、企業を対象としたコーチング研修、ビジネスパーソンを対象としたビジネスコーチング、個人の方を対象としたライフコーチングを提供しております。その他、コーチングを学びたい方のためのコーチングスクールの運営、経営者やビジネスリーダー向けにセミナーを開催しています。興味や関心がございましたら、お気軽にご相談・お問い合わせください。
This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
Coach Business Laboratory, Inc., which operates the Coaching Information Bureau, provides coaching training for companies, business coaching for business people, and life coaching for individuals. In addition, we operate a coaching school for those who want to learn coaching and hold seminars for executives and business leaders. If you are interested or have any questions, please feel free to contact us for further information and consultation.