河合さんが感じた「日本のユンギアン」になるためのイニシエーション

<心理療法コレクションⅤ>ユング心理学と仏教』の冒頭で、河合隼雄さんは、つぎのように本書の目的を語ります。

ここで意図されるのは、「私」という個人がユング派の訓練を受け、ユング派分析家として「日本」という異文化の土地で、ひたすら仕事を続けているうちに、私の分析の在り方が意識的・無意識的な変容を遂げてきたことを仏教との関連という観点から、見直してみようということであります。
しかし、そのようなことを書物にしてまで発表する意義はあるのだろうか。しかも、それを英文で発表するとき、欧米と異なる文化圏において生じた個人的体験を語ってみても、ただそのような変なことがある、ということを知らせる以上に、何らかの意義があるのだろうか。この疑問に答えることは本書の意義ということのみならず、私の心理療法における方法論上の根本問題とも深く関係するので、まずそのことから述べてみたいと思います。(19ページ)

河合さんのプロフィールで必ず紹介されるのは、「日本人として初めてユング研究所にてユング派分析家の資格を取得し、日本にユング心理学を普及させた…」です。この言葉によって「河合さんはユング心理学を究め信奉し、そのすばらしさを日本に広めていった人なのだな…」と、受けとめる人も多いのではないでしょうか。

ここであえてCBLコーチング情報局の見解をお伝えします。「究めた」という意味ではその通りです。ただし「“河合さん自身の”ユング心理学」を確立させた、と補足します。
その次の「信奉」については、そうではないと解釈しています。ユングは最後に東洋の「曼荼羅(マンダラ)」に行き着いたように、西欧で生まれた理論としては「東洋的なもの」を包含していますが、それでも河合さんは「ユング心理学は西欧のものである」ことを痛感します。ところが河合さんは、「日本で最初にユング分析家の資格を取得した」という看板を背負っているのですね。
河合さんは葛藤します。そこで次のように総括します。

河合さんとは、自分自身の力で(他者の力に頼ることなく)、「西欧と東洋(特に日本)」を相対化させ、ユング心理学と異文化日本の「異質の調和」に挑戦し続けた人生だった、と。

河合さんがユング研究所で資格をとるための最終試験に臨んだときのエピソードを引用します。

チューリッヒのユング研究所で資格をとるための最終試験には、いろいろな領域についての口頭試問があります。その試問のときに、ある試験官が「Selfの象徴にどんなものがありますか」と尋ねました。「マンダラ」などのおきまりのことを答えればよかったのですが、そのとき私はふと日本語で「森羅万象」という言葉を思いついたのです。そのために、その口頭試問の間中、論戦するようなことになりました。終わった後で、その試験官が私はユング心理学の基本知識に欠ける、といわれたのは当然のことであります。このために、いろいろ紆余曲折はありましたが、ともかく私は資格を貰うことができました。(42ページ)

河合さんは、言い争いになった背景として、日本の仏教で強調される「草木国土悉皆成仏」の考えが、自分の頭にあった(無自覚に)、と振り返っています。ただ河合さんは、そのことを「ユング心理学と自分は違う」と受けとめるのではなく、続けて次のように述べるのですね。河合さんの“深み”が伝わってきます。

それにしても、単に知識の有無を調べるのではなく、その人間にとって存在を賭けたものを引き出してくるという点で、ユング研究所の試験というものは、意義深いものであると思われます。これは、私が「日本のユンギアン」となるためのイニシエーションの役割を果たしてくれたと思います。(43ページ)


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This article was written in Japanese and converted into English using a translation tool. We hope you will forgive us for any inadequacies.
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